2021.5.6 容器機能

プラスチックの特性とは?種類ごとの特徴や選定基準を説明

プラスチックの特性とは?種類ごとの特徴や選定基準を説明

プラスチックは非常に多くの種類が存在しており、種類ごとに異なる特性を持つ素材です。プラスチック加工に携わる企業の開発・製造部門の方や、大学の研究室の方の中には、プラスチックの各種類の特性を把握し、目的・用途に合う素材を選べるようになりたい方もいるでしょう。

そこで今回は、種類別のプラスチックの特性から、プラスチックを選ぶ基準、理化学シーンでの使用頻度が高いプラスチック製容器までを解説します。

 

1.【種類別】プラスチックの特性

プラスチック(樹脂材料)は安価で加工性に優れていることから、自動車・家電・包装材・食器・雑貨など、さまざま用途に使用される素材です。プラスチックと一口に言っても、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などの種類に分かれます。

ここからは、プラスチックを3種類に分けて、それぞれのカテゴリーに該当するプラスチックの特性を解説します。

 

1-1.熱可塑性樹脂(汎用プラスチック)

熱可塑性樹脂とは、加熱すると変形し、冷却すると固化するプラスチックです。プラスチック製品のほとんどが熱可塑性樹脂であり、汎用プラスチックとも呼ばれます。汎用プラスチックとして代表的なプラスチックの特性は以下のとおりです。

種類 耐酸性 耐アルカリ性 耐アルコ―ル性 耐油性
PE
長所 汎用性・成形性に優れる
短所 接着性・印刷性に難がある
用途 容器・試薬容器・ 包装材料・食器・フィルム・電波機器用品・電線被膜
種類 耐酸性 耐アルカリ性 耐アルコ―ル性 耐油性
PP
長所 汎用性・耐薬品性に優れる
短所 半透明で耐候性が低い
用途 容器・試薬容器・ 自動車部品・家電部品・包装材料・日用品・医療器具
種類 耐酸性 耐アルカリ性 耐アルコ―ル性 耐油性
PVC
長所 安価で強度・耐久性に優れる
短所 高温・低温・溶剤に弱い
用途 電気部品・フィルム・セルロイド・看板・雑貨・工業用ライニング
種類 耐酸性 耐アルカリ性 耐アルコ―ル性 耐油性
PS
長所 電気的・工学的性質に優れて安価
短所 耐熱性・耐候性・耐衝撃性に欠ける
用途 容器・自動車部品・電気部品・玩具・雑貨
種類 耐酸性 耐アルカリ性 耐アルコ―ル性 耐油性
PET
長所 耐久性・耐薬品性に優れる
短所 衝撃と熱に弱い
用途 食品容器・薬品容器・化粧品容器・ペットボトル

 

1-2.熱可塑性樹脂(エンジニアリングプラスチック)

熱可塑性樹脂には、エンジニアプラスチックと呼ばれる、工業用など特定の用途に使用されるプレスチックもあります。エンジニアリングプラスチックとして代表的なプラスチックの特性は以下のとおりです。

種類 耐酸性 耐アルカリ性 耐アルコ―ル性 耐油性
PC
長所 頑丈で安定性に優れる
短所 耐薬品性が低い
用途 容器・工業機器・窓・レンズ・歯車
種類 耐酸性 耐アルカリ性 耐アルコ―ル性 耐油性
PA
長所 耐摩耗性・耐薬品性に優れる
短所 吸湿性が高く安定性に欠ける
用途 衣料品・合成繊維・パイプ・歯車
種類 耐酸性 耐アルカリ性 耐アルコ―ル性 耐油性
POM
長所 剛性・耐摩耗性・安定性に優れる
短所 不透明のみとなる
用途 歯車・スプリング・ビス・ファスナー・キャビネット
種類 耐酸性 耐アルカリ性 耐アルコ―ル性 耐油性
PBT
長所 摩耗・衝撃に強い
短所 熱に弱く加水分解する
用途 自動車部品・電装部品・電気部品・電子部品
種類 耐酸性 耐アルカリ性 耐アルコ―ル性 耐油性
PTFE
長所 強靭なスーパーエンジニアプラスチック
短所 クリープ特性と耐摩耗性が低く高価
用途 理化学用器具・バルブ・コック・ベアリング・ガスケット・ダイヤフラム

 

1-3.熱硬化性樹脂

熱硬化性樹脂は、加熱によって硬化する性質を持つプラスチックです。熱硬化性樹脂として代表的なプラスチックの特性は以下のとおりです。

種類 耐酸性 耐アルカリ性 耐アルコ―ル性 耐油性
PF
長所 電気絶縁性や耐水性に優れる
短所 耐アルカリ性が低い
用途 積層板・耐酸器具・絶縁材料・機械部品・食器
種類 耐酸性 耐アルカリ性 耐アルコ―ル性 耐油性
MF
長所 無色透明で丈夫
短所 特になし
用途 電気部品・自動車部品・積層板・食器
種類 耐酸性 耐アルカリ性 耐アルコ―ル性 耐油性
PUR
長所 発泡体として多様な物性を示す
短所 特になし
用途 断熱材・吸音材・クッション材・接着剤
種類 耐酸性 耐アルカリ性 耐アルコ―ル性 耐油性
EP
長所 耐薬品性や電気絶縁性に優れる
短所 コストが高い
用途 歯車・ライニング・接着剤・金属塗料・金属接着剤
種類 耐酸性 耐アルカリ性 耐アルコ―ル性 耐油性
UP
長所 耐薬品性・成形性に優れて丈夫
短所 特になし
用途 建築材・自動車車体・船舶材料・強化プラスチック板・浴槽

 

2.多様な特性からプラスチックを選ぶ3つの基準

プラスチックには約40種類が存在し、それぞれ異なる性質を持ちます。そのため、各素材の特性を理解したうえで、目的・用途に適したプラスチックを選ぶことが大切です。ここでは、プラスチック素材を選ぶ際に重要となる、機能性・外的要因・安全性の3つの要素について解説します。

また、各プラスチックにおける熱伝導などの熱的性質、引張強度などの機械的性質、電気抵抗などの電気的性質、吸水性などの化学的性質については、下記のページも参考にしてください。

 

2-1.用途に応じて必要な「機能性」

まずは、プラスチックに求める機能性をできる限り多く洗い出すことが重要です。

機械的性質 想定応力・荷重パターン・剛性・変形・弾性・耐衝撃性・クリープ性
物理的性質 低温物性・比重・透明性
化学的性質 吸水性・ガス透過性・燃焼性
熱的性質 耐熱性・熱変形温度・熱伝導率・線膨張率
電気的性質 電気抵抗値・絶縁破壊特性・誘電率・誘電損失・耐アーク性

プラスチックの選定には複数の要素が絡みますが、全体的なコストを算出したうえで、目的・用途に応じて必要となる機能性の基準を設定するとよいでしょう。適正なコストの範囲内で機能要件を満たすプラスチックが見つかれば、大幅に予算オーバーとなる心配はありません。

 

2-2.実際に使用する際の「外的要因」

プラスチックを選ぶ際には、使用環境の外的要因にも注意する必要があります。たとえば、プラスチックを外で使用する場合、日光・雨・風・湿度・温度といった気候条件や、虫や微生物の分解による影響を考慮しなければなりません。プラスチック製の保存容器を使用する場合では、外部からの衝撃や温度変化に耐えうる特性などが求められます。

とはいえ、プラスチックの使用環境を想定して、必要な特性をすべて把握することは簡単ではありません。経験者などに相談しながら、外的要因も踏まえた必要な特性を考えることをおすすめします。

 

2-3.プラスチック自体の「安全性」

プラスチックを使用する際は、安全性を担保することも非常に重要です。プラスチックを使った材料の中には、安定性や加工性の維持を目的に、添加剤が使用されているものもあります。そのため、添加剤の毒性が許容範囲内であるか慎重に精査する必要があります。

また、製造工程で残留するモノマーも毒性を持つことから、モノマー溶出の可能性を確認することも重要です。特に、プラスチックの新材料については燃焼性だけでなく、国が定める法規制に対応しているかもチェックしてください。

 

3.実験・研究・製造現場で使用されるプラスチック製品

理化学分野では、汎用プラスチックであるPEやPP、エンジニアプラスチックのPFAが主に使われています。PEは耐薬品性・耐溶剤性・耐熱性・耐衝撃性が申し分なく、PPは特に耐薬品性・耐熱性が優れていることが特徴です。PFAについては、耐薬品性・耐衝撃性に加えて、耐溶剤性・耐熱性・耐候性も優れています。
実験などで使う消耗品は樹脂製品が多く、特に容器類はさまざまな種類があります。

 

3-1.代表的な3つの樹脂製容器

理化学分野の代表的な樹脂製容器である「PE」「PP」「PFA」の詳細については、以下のとおりです。

●PE製容器

PE製容器は、安価で高い汎用性を持つことから、あらゆる分野で活用されています。理化学系分野においても、最も使用頻度の高い容器です。メジャーなPE製容器はサイズ展開が豊富にあり、20ml~20Lまで幅広いサイズが販売されています。また、バイオポリエチレン製容器のほか、帯電防止容器・遮光瓶・フロロバリアボトルなど、通常のPE製容器に付加価値を追加したラインナップも展開されています。

●PP製容器

PP製容器は、PEと並ぶ汎用樹脂であるPPから作られたプラスチック容器です。PE同様、PP製容器も理化学系で使用頻度は高くなります。PEよりも耐薬品性・耐熱性が高く、オートクレーブ滅菌が可能であること、半透明で内容物を確認しやすいことが特徴です。耐薬品性・耐熱性が求められる場合や、容器の中身を確認しながら作業したい場合は、PP製容器をおすすめします。

●PFA製容器

PFA製容器は、あらゆる有機溶剤への耐性を持ち、耐薬性・耐熱性・耐冷性・純粋性にも優れた、樹脂の中で最も性能が高いプラスチック容器です。半導体製造分野・高純度試薬分野・ライフサイエンス分野など、理化学系において高い信頼性が求められる分野で多く使用されています。

プラスチック容器と一口に言っても、容器のサイズ・素材・機能性など、さまざまな種類の容器が存在しています。目的・用途に合わせて容器を使い分けることで、実験・研究などをスムーズに進められるでしょう。

 

まとめ

プラスチックは種類が非常に多く、また種類ごとに特性が異なります。適切なプラスチック素材を選定するためには、プラスチックの特性に関する知識を身に付けることが重要です。プラスチックに求める機能性や想定される使用環境、安全性を踏まえて、目的や用途に合うプラスチック素材を精査するようにしましょう。

自社の目的・用途に合うプラスチック素材を選びたい方は、ぜひ今回の情報も参考にして、プラスチックの特性や選び方に対する理解を深めてください。

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