遮光瓶とは?色ごとの遮光率・使用時の注意点を徹底解説!
研究・実験に使用する試薬などには、紫外線や特定の光に弱い性質を持つ物質が存在します。光による変性・劣化から物質を守り、適切に保管するためには、遮光瓶に入れておくことが一般的です。
遮光瓶と一口に言っても、容器の色によっていくつかの種類があります。遮光瓶を選ぶ際は光の性質について理解し、用途に合った適切な製品を選びましょう。
そこで今回は、遮光瓶の基礎知識から、遮光率を考慮した色の選び方、使用時の注意点までを解説します。
目次
1.遮光瓶とは?
遮光瓶とは、光が当たると変性・劣化しやすい性質の物質を保管するための容器です。ガラス製の他、樹脂製の遮光容器もあり、用途によりガラス製または樹脂製を使い分けることができます。
容器本体には色が付いていて、特定の光が内容物へと透過することを防ぎます。キャップも付属しているため、ある程度の外気遮断・密閉性を保つことも可能です。
遮光瓶に入れる内容物としては、次亜塩素酸水やエッセンシャルオイルなどが知られています。とくに次亜塩素酸水は器具の除菌・消毒用途として使われることが多く、備品の洗浄に使用した経験がある人も多いでしょう。
次亜塩素酸水は日光に含まれる紫外線に対して弱い性質を持っていて、紫外線にさらされると塩素と酸素に分解されてしまいます。そのため、次亜塩素酸水を保管する際は遮光性がある容器に保管しなければなりません。
ただし、次亜塩素酸水を金属製の容器に保管することは避けてください。次亜塩素酸水は酸性の性質を持つため、金属に触れると腐食を招き、品質劣化を起こす可能性があります。次亜塩素酸水を保管する用途には遮光瓶か、樹脂製の遮光容器が適しています。
2.遮光瓶を選ぶ前に知っておくべき「光の波長」
遮光性能が高い遮光瓶を選ぶためには、まず「光の波長」について知る必要があります。光の波長とは、光の粒子が起こしている振動のことです。光の波長はnm(ナノメートル)単位で表すことができ、下記のような性質を持ちます。
- 波長が短いほどエネルギーは大きく、波長が長いほどエネルギーは小さい
- 波長が短いほど物体を透過しにくく、波長が長いほど物体を透過しやすい
地球に降り注ぐ最も強い光と言えば、太陽光線です。しかし、太陽光線は単一の波長を持つ光ではなく、さまざまな波長の光で構成されています。おおまかに分けるとUV-C・UV-B・UV-Aの3種類がある紫外線、可視光線、赤外線の合計5種類です。それぞれの光は波長範囲を持っていて、下記のようにnm単位で識別されています。
光の種類 | 波長範囲 | |
---|---|---|
紫外線 | UV-C | 約100~280nm |
UV-B | 約280~310nm | |
UV-A | 約310~400nm | |
可視光線 | 約400~800nm | |
赤外線 | 約800nm~ |
上記5種類が存在する光のうち、UV-Cは成層圏付近に存在するオゾンや酸素分子に全て吸収されるため、地表には届きません。地表まで届く光はUV-B・UV-A・可視光線・赤外線の4種類です。
可視光線や赤外線は比較的波長が長く、エネルギーも小さいため、物質を変性させる作用は強くありません。一方、短い波長であるUV-B・UV-Aはエネルギーが大きく、物質を変性させる作用が強い光です。そのため、遮光瓶は基本的にUV-B・UB-Aの光を遮ることを目的としています。
3.遮光瓶は色によって遮光率が異なる?色ごとの遮光率を解説!
遮光瓶は商品タイプによって容量や口内径がさまざまであり、とくに容器本体の色は分かりやすい違いとなっています。遮光瓶が必ず色付きである理由は、色によって光を遮光する効果があるためです。
色が異なると波長ごとの遮光率も変わるため、遮光瓶は容器本体の色に注意して選ばなければなりません。ここでは遮光瓶の色ごとに、遮光率にどのような違いがあるかを解説します。
3-1.青色の遮光瓶
青色の遮光瓶は、約300nmまでの波長であれば、99%近くの高い遮光率を持ちます。300nmの波長を持つ光とは、波長範囲が280~310nmであるUV-Bの一部です。
しかし、波長が300nmを超えると、青色の遮光瓶は遮光率が著しく低下します。310~400nmにおける遮光率は最低で10%付近まで低下するため、UV-Aを遮光する用途には適しません。
3-2.緑色の遮光瓶
緑色の遮光瓶が高い遮光率を発揮できる対象は、波長が約350nmまでの光です。UV-Bはほとんど遮光でき、UV-Aの一部(310~350nm)も90%以上カットすることができます。
光の波長が350nmを超えると遮光率は低下するものの、青色の遮光瓶ほど顕著な低下ではありません。しかし、UV-A全体に対する高い遮光率を持つとは言えないため、UV-Aを遮光する用途には使用しないようにしましょう。
3-3.茶色の遮光瓶
茶色の遮光瓶は、約400nmまでの波長を99%近く遮光することができます。400nmまでの波長にはUV-B・UV-Aが全て含まれるため、茶色の遮光瓶は紫外線をほとんど防ぐことが可能です。
波長が400nmを超えると、茶色の遮光瓶であっても遮光率は低下します。しかし、低下の傾向はゆるやかであり、400~800nmの可視光線であっても60%付近の遮光率を保ちます。そのため、UV-B・UV-Aを遮光する用途には、茶色の遮光瓶がおすすめです。
4.遮光瓶を使用する際の注意点
遮光瓶を使用する際の注意点を3つ紹介します。
○変形・劣化のおそれがある使い方をしない
遮光瓶を使用する際は、本体説明書やメーカーの注意書きを確認しましょう。変形・劣化のおそれがある使い方としては、「有機溶剤の保管」や「オートクレーブによる滅菌」などが挙げられます。
有機溶剤は他の物質を溶かす性質があり、キャップ部分の樹脂・ゴム素材を劣化させたり、ガラス表面に有機溶剤の成分が吸着したりするケースがあります。
オートクレーブは対象物を飽和蒸気で滅菌する滅菌法であり、高温・高湿・高圧に弱い容器は使用できません。変形・劣化の生じた遮光瓶は、保存性が低下してしまいます。
○運搬用に用いることはなるべく控える
遮光瓶は保存容器として用いることを目的に製造されているため、運搬用に用いることは想定されていません。運搬中に遮光瓶同士がぶつかったり、不注意で落としたりした場合に、衝撃に耐えられず容器が変形・破損する可能性があります。
運搬用に用いる場合は、必ず事前に耐久性・安全性のテストを行った上で判断しましょう。遮光瓶に内容物を入れたまま運搬する際は、容器同士の接触や落下に注意してください。
○なるべく光の当たらない場所で保管する
遮光瓶に内容物を入れて保管する際は、直射日光・室内照明の当たらない場所で保管してください。紫外線をほとんど遮光できる茶色の遮光瓶であっても、遮光しきれない紫外線や、可視光線・赤外線の大部分は透過してしまいます。
室内照明も微量ながら紫外線を含んでいるため、室内に遮光瓶をそのまま置いていると保管の目的を果たせません。遮光瓶は薬品用の扉付き棚やロッカーに入れて保管し、必要な場合にのみ取り出して使用しましょう。
5.樹脂製の遮光容器なら「サンプラテック」がおすすめ!
遮光容器にはガラス製の遮光瓶だけではなく、より扱いやすい樹脂製の製品もあります。樹脂製の遮光容器はガラスと比べて破損するおそれが少なく、軽量であるため取り扱いが容易です。
樹脂製の遮光容器を選ぶ場合は、サンプラテックの製品をおすすめします。サンプラテックの遮光容器は樹脂製でも遮光性能が高いことが特長です。
PE広口遮光瓶
PE(ポリエチレン)製であり、不透明な褐色の遮光容器です。透過率測定試験では、波長220~800nmの光に対して透過率ほぼ0%を達成しました。中栓付きで、次亜塩素酸水などの光に弱い薬品を保管する用途に適しています。PE広口遮光瓶のバリエーションとして、作業性の高い下口活栓や取手が付いたタイプの遮光瓶もあります。
商品詳細を見るフロロバリア遮光瓶広口
PE広口遮光瓶の遮光機能はそのまま、容器表面をフッ素化処理した遮光容器です。フッ素化されたポリエチレンのため、優れたガスバリア性と耐薬品性があり、有機溶剤への耐性が強化されます。
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