EOG滅菌とは?滅菌効果に影響する要素からEOG滅菌が可能な容器まで
EOG滅菌は、主に医療用器具・機器の分野で用いられている滅菌方法です。EOG滅菌を行うことにより、光学器械類をほぼ無菌の状態に保つことができます。
EOG滅菌は、処理後に注意しなければならない点もあるため、正しく使用することが重要です。EOG滅菌を業務等で使用する際は、EOG滅菌のメカニズムや特徴を理解しておきましょう。
今回は、EOG滅菌のメリットや滅菌効果に関わる要素、使用時の注意点を解説します。最後に、EOG滅菌で使用できるプラスチック容器も紹介するため、EOG滅菌の導入を考えている方はぜひ参考にしてください。
1.EOG滅菌とは?
EOGとは「酸化エチレンガス」を意味しており、EOG滅菌はこの酸化エチレンガスを使用した滅菌方法です。滅菌器の缶内に滅菌対象物を入れて脱気し、酸化エチレンガスを注入して滅菌します。微生物の細胞内にある核酸と酸化エチレンガスが化学反応を起こし、細胞の代謝・増殖を抑制することにより、微生物を殺滅できるメカニズムです。
医療機器等の滅菌に使用される方法としては、オートクレーブ滅菌も知られています。オートクレーブ滅菌とは、缶内を高温高圧の水蒸気で満たして微生物を死滅させる処理方法です。
EOG滅菌の滅菌効果は酸化エチレンガスに由来しているため、滅菌処理に水蒸気を使用しません。温度や湿度による素材の制限を受けにくく、さまざまな対象物に使用できます。
1-1.EOG滅菌のメリット
EOG滅菌には大きく2つのメリットがあります。
(1)低温で滅菌可能
オートクレーブ滅菌と比べた場合、EOG滅菌は低温で滅菌処理ができます。処理工程で加温・加湿は行うものの、処理温度は高くても60℃程度です。EOG滅菌は素材の変質を起こしにくく、オートクレーブ滅菌ができない低耐熱性の対象物にも対応できます。
(2)樹脂の場合は素材を選ばずに滅菌可能
EOG滅菌はガス浸透性が高い素材ほど滅菌効果が高く、樹脂製の場合は素材を選ばずに滅菌可能です。プラスチック容器やゴム製品、ビニール袋などの一般的な容器・包装材などにも使用できます。
2.EOG滅菌の効果に影響する5つの要素
EOG滅菌後の無菌性を保証するためには、滅菌手順・効果を科学的に試験・検証するバリデーションの設定が必要です。ここからは、EOG滅菌の効果に影響する要素を5つ挙げながら、それぞれの滅菌効果への影響を紹介します。
〇ガス濃度
EOG滅菌は、基本的に酸化エチレンガスのガス濃度(mg/L)が高いほど滅菌効果が高まります。ガス濃度はガス注入前における缶内の減圧度や、注入時のガス圧によって濃度管理を行うことが可能です。
〇温度
EOG滅菌による微生物への不活性化は、高い温度の方が効果が高くなります。特に40~50℃程度までは、10℃の温度上昇で不活性化速度が約2倍になるなど影響は顕著です。しかし、60℃を超える温度になるとガス中のEO分子が重合を起こし、滅菌効果を期待できません。
〇湿度
EOG滅菌の滅菌効果を発揮するためには、相対湿度で35~50%RH程度の湿度が必要です。適切な湿度があることで、微生物への浸透性やガスによる不活性化作用が発生します。
〇時間
EOG滅菌にかける時間が長いほど対象物に酸化エチレンガスが浸透し、滅菌効果を高められます。しかし、滅菌時間を長く取ることは作業性の低下を招くため、対象物を確実に滅菌できる時間を把握することが重要です。
〇分布の均一性
EOG滅菌ではプレコンディショニングルームでの温湿度管理や攪拌装置によって、缶内におけるガス濃度・湿度・温度分布の均一化を図っています。しかし、滅菌器への積載方法や包装形態などの条件によっては均一でない部分が生じるため、分布の均一性を評価することが必要です。
3.EOG滅菌を行う際の注意点
EOG滅菌には他の滅菌方法と異なるメリットがあるものの、安全性における問題点もあります。EOG滅菌における問題点は、滅菌用に酸化エチレンガスを使用していることが原因です。
酸化エチレン、および反応生成物であるエチレンクロルヒドリン等には人体に対する毒性があります。取り扱いに関する正しい知識がなければ、危険性が高まるため注意してください。
ここからは、EOG滅菌を行う際の注意点として、2つのポイントを解説します。
3-1.滅菌直後はすぐに使用できない
EOG滅菌を行った直後の対象物には、酸化エチレンやエチレンクロルヒドリン等の有毒な残留物が付着しています。有毒な残留物に接触したり、ガスを吸入したりすると頭痛や嘔吐などの症状を起こす可能性があるため、滅菌直後の対象物にはすぐに使用できません。
有毒な残留物による被害を受けないためには、EOG滅菌後にガスおよび残留物の除去作業が必要です。除去作業は「エアレーション」と呼ばれ、フィルター濾過した無菌空気を還流させることで対象物のガス・残留物を除去します。エアレーションによる除去時間は空気温度や対象物の形状等によって変動し、短い場合でも8時間はかかる作業です。
3-2.曝露対策や排出ガス処理が必要となる
EOG滅菌に使用する酸化エチレンガス自体も毒性がある化学物質であり、作業室にはガス漏れ警報器やガスモニター、局所排気装置が設置されています。加えて、滅菌作業者自身もガスの曝露対策を行うことが重要です。滅菌作業や機器操作時はゴーグル・ガス吸着マスク・手袋などの防護具を装着して、ガスの吸引・接触を防ぎましょう。
また、酸化エチレンガスはPRTR制度における第一種指定化学物質に指定されており、排出量の記録および国への届け出をしなければなりません。定期的な作業環境測定を行う義務もあり、EOG滅菌を行う場合は適正な排出ガス処理が必要となります。
4.EOG滅菌が可能なプラスチック容器は?
EOG滅菌では酸化エチレンガスによる滅菌効果を高めるために加温するものの、滅菌効果が低下する60℃を大きく超えて加温することはありません。そのため、EOG滅菌の対象物に求められる耐熱性は60℃程度となっています。プラスチック容器はポリエチレン(PE)・ポリプロピレン(PP)など汎用樹脂を含め、ほとんどの材質でEOG滅菌を行うことが可能です。
また、前述のとおりEOG滅菌を行った後は、必ずエアレーションを十分に行いましょう。EOG滅菌直後のプラスチック容器には目に見えないガスや残留物が付着しています。滅菌後は缶内に放置して、残留ガス等を除去する安全管理が必要です。
サンプラテックではプラスチック製EOG滅菌容器として、下記の3商品を取り扱っています。いずれも滅菌袋に個装された、EOG滅菌済みの滅菌瓶です。滅菌袋の中央には脱気可能な不織布が貼り付けられており、滅菌後のエアレーションまで確実に行っています。
EOG滅菌瓶(PE広口)
PE素材を使用した、乳白色・中栓付きの滅菌瓶です。水質検査の採水用としてはもちろん、薬品・化粧品・食品などのサンプリング用としても使用できます。
商品詳細を見るEOG滅菌瓶(PP広口)
PP素材を使用した、透明・中栓なしの滅菌瓶です。透明であるため採取時に不純物が混じっていてもわかりやすく、表面の目盛りで採取量を確認することもできます。フタを閉じた状態でも中身がわかり、水質検査の採水用に最適です。
商品詳細を見るEOG角型滅菌採水瓶
容器本体がPP素材であり、透明・角型・中栓付きの滅菌瓶です。角型であることにより収納性が高く、調査場所に複数本を持ち込む必要がある場合に適しています。透明であるため、採水用の滅菌瓶としても最適です。
商品詳細を見るいずれの商品も、100ml・250ml・500ml・1Lの容量を取り揃えております。プラスチック製EOG滅菌容器をお探しの方は、ぜひサンプラテックの滅菌瓶をご覧ください。また、希望する容器へのEOG滅菌処理を特注依頼することも可能です。