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PFAとは|代表的な用途や8つの特性を詳しく解説

PFAとは|代表的な用途や8つの特性を詳しく解説

優れた耐熱性や耐薬品性を持つフッ素樹脂は、多くの有用な特性を持つことから、現代産業のさまざまな分野で活躍しています。PFAは、フッ素樹脂が持つ多様な特性を持ちつつ、さらなる加工性を求めて開発された素材です。

この記事では、PFAの基本的な知識から分子構造・加工方法、PFAが持つ8つの代表的な特性まで詳しく解説します。研究者や、企業の製造、品質保証の関係者、理工系大学の関係者、理化学系の営業担当者など、PFAの特性やメリットを把握したい方は、ぜひ最後まで目を通してみてください。

 

1.PFAとは?

PFA(ペルフルオロアルコキシアルカン)とは、四フッ化エチレンとパーフルオロアルコキシエチレンの共重合体です。複雑な形状に溶融成形できる特性を持っており、半導体・化学・電子機械・医療分野など、産業の最先端において重要な役割を果たしています。

PFAの代表的な用途は、電線被膜やライニング、半導体におけるウェハバスケットなどです。また、優れた耐薬品性を持つことから、薬品を入れるボトル・容器でもPFAは広く利用されています。

PFAは、フッ素樹脂の一つでもあります。フッ素樹脂は耐熱性・電気絶縁性・耐薬品性・被粘着性に優れており、PFAもフッ素樹脂同様の特性を持つ素材です。

 

1-1.PFAの分子構造・加工方法

PFAの分子構造は、パーフルオロ・エポキシプロパンより二量体を通じてパーフルオロを合成し、TFEと共重合することでポリマーを得ています。PFAの融点は約280~320℃、密度は2.12~2.17g/cm2、最高連続使用温度は260℃です。

PFAは、最も一般的なフッ素樹脂であるPTFEと比較すると、成形方法に大きな違いを持っています。PFAとPTFEの大きな違いは、「溶融成形できるか否か」です。

PFA 溶融成形できる
PTFE 溶融成形できない

PFAは、ピンホールのない被膜を得ることができるだけでなく、PTFEに匹敵する特性を持ちながら柔軟な成形性を有していることが特徴です。

PFAの主な成形方法は、ブロー成形法・押出成形法・トランスファー成形法・射出成形法・回転成形法・溶融圧縮成形法などです。特に、PFAのブロー成形に関しては、市場に出回る成形機自体が存在せず、特別な技術と経験で一から成型機を開発する必要があります。PFAのブロー成形が稀有な技術となっている理由は、フッ素樹脂特有の高い溶融温度と成形時の腐食性ガスにより、特有の成型機と成形用金型を必要とするためです。したがって、世界的にも数えるほどのメーカーしか、PFAのブロー成形品を製造できません。

一方で、PTFEは加熱してもゲル状となり、完全に溶融しない特性を持っています。そのため、PTFEは溶融成形ができず、切削加工を行うことが一般的です。

 

2.PFAが持つ8つの特性

PFAは、耐熱性・耐薬品性・純粋性・電気絶縁性・非粘着性・低摩擦性・耐燃焼性・耐紫外線特性という8つの特性を持っています。特に、耐熱性・耐薬品性・純粋性の3つの特性は、PFAの性質を特徴づける重要な特性です。

ここからは、PFAが持つ代表的な特性を詳しく紹介します。

 

2-1.耐熱性・耐寒性

PFAは、最高連続使用温度260℃であり、他の樹脂と比較しても最高クラスの耐熱性を持つ素材です。特に、省エネルギーや排気ガス規制の対応に迫られている自動車業界では、PFAの持つ耐熱性が注目を集めています。自動車変速機のシール材やベアリングなど、自動車部品におけるPFAの用途はさまざまです。エンジン付近などの高温下においても機能を維持できるため、多くの箇所でPFAが使用されています。

また、PFAは-196℃の極低温度下においても耐性を発揮する素材です。低温での耐衝撃性は他の樹脂よりも優れているため、低温下での利用が想定される機器にも広く利用されています。

 

2-2.耐薬品性

PFAは、薬品に対しても優れた耐性を発揮する素材です。さまざまな化学薬品に晒されても安定性を示し、「薬品に浸される」「膨潤する」などの劣化は起きません。酸やアルカリ、有機溶剤など、ほとんどの薬品に耐性を発揮することは、PFAの持つ際立った特性です。

PFAの持つ優れた耐薬品性は、半導体分野で役立てられています。半導体の製造過程では、フッ化水素酸をはじめ極性の強い薬品が使用されるため、製造装置の部品には高い耐薬品性が必要です。PFAは優れた耐薬品性により、半導体装置のバルブ・ポンプ・配管・薬液容器など、多種多様な部品に利用されています。

 

2-3.純粋性

PFAは化学薬品に不活性であり、溶出物がほぼ発生しない素材です。金属イオンの溶け出しが少ないというPFAの「純粋性」は、非常に重要な特性となっています。

特に、半導体の製造や製薬・化学・食品における含有物質の微量分析を行う分野で有用です。PFAの容器を使用すると、内容物が容器から溶け出すことによる金属イオン汚染を防ぐことができます。万が一金属イオンなどの不純物が半導体の製造工程、あるいは微量分析中に生じれば、業務を円滑に遂行することはできないだけでなく、莫大な損害につながる可能性があります。PFAは、微細なミスを許されない現場において不可欠な素材です。

 

2-4.電気絶縁性

PFAは高い電気絶縁性を持っており、さまざまな樹脂の中でも誘電率が小さいため、周波数などの影響も受けません。例えば、同じフッ素樹脂であるETFEと比較しても、PFAの誘電率は小さい値を示しています。

素材名 誘電率
PFA 2.1
ETFE 2.6

PFAの高い電気絶縁性は、電気機器などで有効活用される特性です。情報通信ケーブルの被膜・コーティングなど、絶縁体・電気絶縁材が求められる箇所に適しています。

 

2-5.非粘着性

PFAは接触角が非常に大きいため濡れにくく、粘着性がほとんどないという特性も持っています。純粋性も併せ持っていることから、PFAやPTFEは、ホットプレートやフライパンの素材としても利用される物質です。PFAやPTFEを利用すると、フライパン表面の焼き付きなどを防ぐことができます。

また、PFAは非粘着性を持つことから、印刷機など粘性のあるインクを取り扱う器具の部品にも使用されます。

 

2-6.低摩擦性

PFAは、摩擦係数が非常に小さく、滑りやすいという特性を持っています。PFAの動摩擦係数は0.2を示しており、同じフッ素樹脂であるETFEよりも小さい値です。PFAが低摩擦性を持つ理由は、分子内の原子間結合力が大きいことに由来します。

素材名 動摩擦係数
PFA 0.2
ETFE 0.4

低摩擦性のあるPFAは効率的な動力伝達が可能であるため、自動車のベアリングやブレーキパッド、チューブなどに利用されています。

 

2-7.耐燃焼性

PFAは耐燃焼性を持つ素材です。PFAはフッ素樹脂であるため酸素と結合しにくく、燃えにくいことが特徴です。

フッ素樹脂が多様な用途で利用されている大きな理由は、耐燃焼性にあります。そのため、PFAも優れた耐燃焼性を持つことから、精密機器や電線などを燃焼から守るための被覆材として、幅広い産業用途で用いられています。

 

2-8.耐紫外線特性(耐候性)

PFAは耐紫外線特性(耐候性)に優れており、過酷な環境下においても経年変化しにくい素材です。20年の暴露環境の中でも、伸びや引張強度の低下は起きないと言われています。

そのため、建築物の屋根材・壁材・テント膜など、PFAやPTFEは耐久性が必要な屋外で使用する資材に利用されます。

 

まとめ

フッ素樹脂の一つであるPFAは、PTFEと異なり、溶融成形ができるという特徴を持つ素材です。そのため、PFAのブロー成形には特殊な技術や経験を要します。近年は、半導体工業分野やエレクトロニクス分野、医療分野など、PFAはさまざまな場所で幅広く利用されています。

PFAは特に耐熱性・耐寒性・耐薬品性・純粋性に優れており、高純度の薬品を入れる容器として最適な素材です。株式会社サンプラテックでは、多様な用途に活用できるPFAボトルを用意しています。PFAボトルをお求めの方は、web販売サイト「PLA.com」をぜひご利用ください。

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