2021.6.4 容器機能

樹脂製品の寿命!劣化要因と保管時に注意が必要な樹脂容器

樹脂製品の寿命!劣化要因と保管時に注意が必要な樹脂容器

企業の研究部門や技術開発、製造、品質管理などの分野では、樹脂製品を使用する機会が多くあります。樹脂製品の耐久性・耐衝撃性・耐摩耗性などは素材の種類や保管方法によって変化するため、寿命を正しく予測し、適切なタイミングで交換することが大切です。

この記事では、樹脂(プラスチック)製品の劣化要因と寿命の予測方法、保管時に注意が必要な樹脂製容器を紹介します。樹脂製品の寿命を正しく把握することは、実験や検査などを安全に進めることにつながります。

 

1.樹脂(プラスチック)製品の寿命を左右する劣化要因6つ

樹脂製品の劣化原因には、熱・光・有機溶剤・応力・水・金属が挙げられます。単一要因のみではなく、複数要素が関係するケースもあるため、寿命を予測する際には注意しましょう。

以下では、樹脂製品の寿命を左右する要因別に劣化メカニズムや症状を解説します。

 

1-1.熱

樹脂は主に、炭素(C)・酸素(O)・水素(H)によって構成される高分子化合物です。樹脂製品が加熱されると分子運動が活発化し、空気中の酸素と反応して、分子構造が変化します。分子構造の変化は、樹脂製部品の収縮や性能の変化を招く原因です。

熱による劣化を防ぐためには、樹脂製品の耐熱温度を守ることが求められます。また、熱源の近くで樹脂製品を使う際には、メーカー指定の温度を超えないように留意しましょう。

 

1-2.光

樹脂製品が光エネルギーを吸収すると、分子同士の化学結合が切断されて、物性や外観が変化します。光(紫外線など)によって生じる劣化の具体例は、以下のような内容です。

物性の変化
  • 分子量の低下
  • 強度や衝撃強度の低下
  • 絶縁破壊強さなどの低下
外観の変化
  • 光沢の低下
  • 変色

樹脂製品の光による劣化は、紫外線劣化と呼ばれるケースもあります。樹脂製品を屋外で長期間使用する際に変色したり、光沢が低下したりする現象が、光による劣化です。

 

1-3.有機溶剤

有機溶剤とは、他の物質を溶かす性質を持ち、塗装や洗浄、印刷などの作業に使用される有機化合物のことを指します。樹脂製品と類似した構造を持つ有機溶剤は、材料内に取り込まれやすいものが多く、劣化を招く要因です。

ただし、有機溶剤と樹脂製品の相性は、構造以外の要素にも左右されます。そのため、構造の差が大きいことのみを判断基準にして、溶解性を推測する方法はハイリスクです。有機溶剤による劣化が懸念される状況では、都度メーカーに問い合わせし、安全性を確認しましょう。

 

1-4.応力

応力とは、物体が外部から力を受けた際、内部に発生する力です。切削加工した際の欠陥が見られる部分に応力が集中すると、樹脂製品が劣化することがあります。応力による劣化を招く欠陥の代表例は、以下のような内容です。

  • 気泡
  • クラック
  • 異物の混入
  • ウェルドライン

ウェルドラインとは、樹脂製品の表面に生じる線状の模様です。ウェルドラインの入った部分に外部から強い力を受けた場合、破損するリスクがあります。

 

1-5.水

一部の樹脂は水によって加水分解を起こし、劣化することがあります。ポリカーボネート(PC)を例に出すと、「PCのエステル結合が水によって遮断されると二酸化炭素が発生し、加水分解する」といったメカニズムです。

ポリカーボネート(PC)以外には、ポリエチレンテレクタラート(PET)がエステル結合を有し、過水分解しやすい種類の樹脂とされています。また、ポリウレタン(PU)も加水分解しやすく、水による劣化が見られやすい樹脂です。

 

1-6.金属

金属イオンが樹脂の酸化反応の触媒として働き、劣化を招くケースもあります。コバルトやマンガンは、樹脂に対して影響を及ぼしやすい金属の代表例です。

ポリプロピレン(PP)は、高温下において、銅と反応する性質を持ちます。そのため、ポリプロピレン(PP)製品の使用環境によっては、「ラジカル連鎖開始阻害剤」の添加などの対処が必要です。

ラジカル連鎖開始阻害剤とは、銅イオンなどをキレート化し、ラジカルの生成を抑制する安定剤を意味します。ラジカルの生成を抑制すれば、樹脂の自動酸化反応は起こりません。

 

2.トラブル防止!樹脂(プラスチック)製品の寿命予測方法

樹脂製品はさまざまな要因によって劣化するため、正確な寿命予測を進めることは、難易度が高いといえます。しかし、樹脂によって製造された自動車部品や工業用部品の安全性を高めるためには、寿命予測が不可欠です。また、実験器具の交換時期を決めるためにも、「樹脂製品の寿命をある程度予測したい」と考える人もいるでしょう。

樹脂の寿命予測に現在使用されている一般的な方法は、促進劣化試験です。促進劣化試験とは、さまざまな条件下において樹脂製品を実際に使用し、統計的な観点から寿命を求める方法を意味します。

たとえば、促進劣化試験法の代表例として、「アレニウス法」など以下の4つが挙げられます。

アレニウス法 スウェーデンの科学者・アレニウスの提唱した式に則り、「速度定数の対数は、絶対温度の逆数に比例する」という理論に基づいて寿命を評価する方式
時間−温度換算則法 基準温度よりも高温下で試験を実施し、マスターカーブを描くことで、長期間経過した場合の緩和弾性率を予測する方式
S−N線図法 通常よりも高いストレスをかけた状態におけるS−N線図をもとに、正常域(通常レベルのストレスをかけた状態)における寿命を予測する方式
マイナー則法 直接被害則とも呼ばれる「マイナー則」を使用し、残存寿命を予測する方式

いずれの方法で寿命予測を進める場合も、各分野の専門家による多角的なアプローチを求められます。そのため、寿命予測を行う際には、データ分析の専門家・技術者などがチームを組み、進めることが一般的です。

 

3.樹脂製容器の寿命は?

樹脂製容器の寿命の目安は、劣化症状が見られたときです。劣化症状の見られる樹脂製容器の使用を続けると、ものづくり・研究活動に支障をきたす可能性があるため、極力早く交換しましょう。

樹脂製容器の劣化症状の具体例は、以下のような内容です。

  • 樹脂が黄変している
  • クラックが目立つ
  • 形状が変化している
  • 溶ける

ただし、製造・研究現場などで使用する樹脂製容器は、使い捨てを想定した製品がほとんどです。交換時期を決める際には、メーカー指定の用法にも気を配り、使用方法に応じて適切に交換しましょう。樹脂製容器を買い替える際には、多種多様な製品を扱うサンプラテックの通販サイトをご活用ください。

 

3-1.保管時に注意が必要な樹脂製容器

樹脂容器の素材によっては、使用・保管方法に注意を要することがあります。使用・保管方法を誤ると寿命が短くなったり所定の効果が薄れたりするため、注意しましょう。

■フロロバリア

フロロバリアとは、通常のポリ瓶の表面にフッ素化処理を施した容器です。フロロバリアが施された樹脂容器は、表面を傷つけないように保管しなければなりません。表面が傷つくとフッ素化処理の効果が薄まり、耐薬品性やガスバリア性が低下することがあります。

また、フロロバリアの基材はポリエチレンであるため、約80度以上の熱に耐えられません。熱源の近くで使用する際には、耐熱温度を超えないように配慮しましょう。フロロバリアが施されたボトル・遮光瓶を直火で加熱することも、避けてください。

■滅菌容器

滅菌容器とは、ポリエチレンやポリプロピレンなどの樹脂容器に、滅菌処理を施した容器です。滅菌容器も、保管方法に注意を要する樹脂容器の1つとなります。滅菌容器を保管する際には、以下の注意点を守ってください。

  • 高温多湿の環境を避ける
  • 直射日光のあたる場所を避ける
  • 1年以上の長期にわたり、保管しない
  • 個包装を開封した状態で、保管しない

注意点を守ることなく保管すると、滅菌効果が低下するケースがあります。各種検査に使用されることが多い滅菌容器は、滅菌効果が低減した製品を使用すると、たとえば水質検査・食品検査などの結果に影響を及ぼすリスクがあるため、注意しましょう。

 

まとめ

樹脂製品は、耐候性や耐薬品性、耐熱性に配慮し、適切な頻度で買い替えを進めたり、用途に応じた素材を選択したりすることが大切です。また、樹脂製品の寿命を左右する要因には、熱や光、有機溶剤や応力などが挙げられます。樹脂製品の寿命予測には、アレニウス法などの促進劣化試験を使うことが一般的です。

ものづくり・研究活動に使用する樹脂容器は、基本的に使い捨てを前提として製造されているため、劣化症状が見られる前であっても、使用用途に応じて適切に交換しましょう。

実験器具・機器メーカー販売サイト「PLA.com」