2021.2.2 容器機能

プラスチック容器の耐熱温度|素材別の性質・特徴を解説

プラスチック容器の耐熱温度|素材別の性質・特徴を解説

プラスチック素材にはさまざまな種類が存在し、素材ごとに耐熱温度が異なります。大学や企業の研究所などでプラスチック容器を使用する方は、研究内容や滅菌処理などの利用用途に耐えうる耐熱温度のプラスチック容器の使用が必須です。

そこで今回は、素材別のプラスチック容器の耐熱温度から、プラスチック容器を滅菌処理する場合の注意点までを解説します。実験や研究で使用するプラスチック容器の耐熱温度を知りたい方はもちろん、プラスチック容器を探している方も、ぜひ参考にしてください。

 

1.【素材別】プラスチック容器の耐熱温度

ひとくちにプラスチック容器と言っても、使用されているプラスチック素材はさまざまです。耐熱温度をはじめとした容器の特徴や性質は、使用されている素材の種類によって異なります。

そのため、実験や仕事でプラスチック容器を用いる場合は、常時使用することを考慮して、融点(限界温度)だけでなく、耐熱温度から熱変形温度まで細かく確認しましょう。

下記表は、プラスチックの素材別耐熱温度について、高い順番にまとめた表です。実際の用途をイメージして、どのプラスチック素材であれば常用に耐えうるのかを確認してください。

プラスチック容器の素材原料 常用耐熱温度
フッ素樹脂(PTFE・PFA) 260°C
フッ素樹脂(PVDF) 150°C前後
ポリプロピレン(PP) 100~140°C
ポリカーボネート(PC) 120~130°C
高密度ポリエチレン(HDPE) 90~110°C
PETボトル(耐熱ボトル) 85°C
ABS樹脂 70~100°C
低密度ポリエチレン(LDPE) 70~90°C
アクリル樹脂(PMMA) 70~90°C
ポリスチレン(PS) 70~90°C
ポリ塩化ビニル(PVC) 60~80°C

ここからは、上記表に記載したそれぞれの素材原料について、簡潔に説明します。

 

1-1.フッ素樹脂(PTFE・PFA)

フッ素樹脂とは、フッ素を含んだオレフィンを重合して生成される合成樹脂のことを言います。フッ素樹脂のなかでも、PTFE(四フッ化エチレン樹脂)は使用量・生産量ともに最も多く、一般的に言われるフッ素樹脂はPTFEのことを指します。

PFA(四フッ化エチレン・パールオロアルコキシエチレン共重合樹脂)は、PTFEに近い性質を持ち、加工性に優れています。

どちらも主に、調理器具のコーディングや薬品を使用する環境用のチューブやホースなどに使用されており、化学薬品を使用する分野や半導体製造の分野では欠かせない素材です。

 

1-2.フッ素樹脂(PVDF)

フッ素樹脂(PVDF)は、耐薬品性・耐熱性・耐低温性・絶縁性・対候性・非粘着性などの、数多くの優れた特徴を持つ素材です。

特に、耐薬品性・耐熱性・耐低温性は非常に優秀で、高温高濃度の酸・アルカリにも耐えうる性質を持ちます。

幅広い有機溶媒に対応できるフッ素樹脂(PVDF)は、理化学機器において、分析前処理のシリンジフィルターや接続用のコネクタなどに活用されます。

 

1-3.ポリプロピレン(PP)

ポリプロピレン(PP)は、あらゆるプラスチック素材のなかでもトップクラスに使用量の多い汎用素材です。プラスチック樹脂のなかで最も比重が軽く、強度・透明性・加工性に優れているという特徴を持ちます。

引張強度・圧縮強度・衝撃強度といった機械的強度から、耐熱性・耐薬品性・耐摩耗性といった機械的特性にも優れており、理化学機器においては、ビーカーやシリンジフィルターの素材に使用されます。

 

1-4.ポリカーボネート(PC)

ポリカーボネート(PC)は、ガラスに匹敵する透明性を持ちながら、あらゆるプラスチック素材のなかでも最も衝撃に強いことが特徴の素材です。

さらに、温度変化にも強いという特徴を持っており、冷蔵庫から電子レンジまで、幅広い温度帯で問題なく使用することができます。

ポリカーボネートは、透明度・強度の強さ・温度変化に強い特徴を活かして、デシケーターなどの素材に使用されています。

 

1-5.高密度ポリエチレン(HDPE)

高密度ポリエチレン(HDPE)とは、密度が0.942~0.970のポリエチレンのことです。低密度ポリエチレン(LDPE)よりも密度が高く、硬度や剛性に優れているという特徴を持ちます。

さらに、衛生性・耐薬品性・耐水性にも優れており、薬品や食品の保存にも適しています。

さまざまな加工に耐えうる強度と加工性を有する高密度ポリエチレン(HDPE)は、理化学機器においてボトル容器の素材に使用されることが特徴です。

 

1-6.PET(耐熱ボトル)

PETとは、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene terephthalate)と呼ばれる、石油から作られる樹脂を原料とした素材です。

耐衝撃性・耐薬品性・加工性に優れており、かつ透明性が高い点も特徴で、理化学機器においてはPET板で主に使用されます。その他、プレートシールの素材にも使用されることがあります。

 

1-7.ABS樹脂

ABS樹脂とは、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレンの3つの素材を重合させて作られたプラスチック素材です。それぞれの素材の長所を併せ持っていることが特徴で、剛性や耐衝撃性に優れており、表面も滑らかな素材です。

加工性にも優れているため、汎用的な素材としてさまざまな用途に使用されています。理化学機器においては、ナチュラル色の樹脂板で主に活用される素材です。

 

1-8.低密度ポリエチレン(LDPE)

低密度ポリエチレン(LDPE)とは、密度が0.910~0.930未満の密度が低いポリエチレンのことです。ポリエチレンの一種であり、分子構造と製法が異なるため、高密度ポリエチレン(HDPE)とは区別されます。

低密度ポリエチレン(LDPE)は比重が軽く柔軟性に優れているほかに、衛生性・耐薬品性・耐寒性・耐衝撃性・耐水性など多くの長所を持っていることが特徴です。

理化学機器における低密度ポリエチレン(LDPE)の用途は幅広く、ボトル容器の中栓やポリエチレンフィルム、樹脂ペレットなど、幅広い用途に使用されています。

 

1-9.アクリル樹脂(PMMA)

アクリル樹脂(PMMA)は、透明度が非常に高く、厳しい気象条件にも対応できる丈夫な素材です。切断・曲げ・穴あけなどが容易であり、接着剤を用いた張り合わせなどにも適しているなど、加工性にも優れています。

透明度の高さや加工性だけでなく、手触りやツヤ感の良さも魅力です。理化学機器においてアクリル樹脂(PMMA)は、樹脂板や真空デシケーターなどの素材としても使用されています。

 

1-10.ポリスチレン(PS)

ポリスチレン(PS)はスチロール樹脂とも呼ばれており、数あるプラスチック素材の加工においても、トップクラスに使用されている素材です。

安価で加工性に優れていることが特徴で、ほとんどの成型方法に使用できることから、日用品から機械部品まであらゆる製品の素材として使用されています。

理化学機器においても、フラスコやメスピペット、樹脂ペレットなどさまざまな用途の用品にポリスチレン(PS)が使用されます。

 

1-11.ポリ塩化ビニル(PVC)

ポリ塩化ビニルは、強度・耐久性・対候性や加工性に優れており、非常に汎用性の高いプラスチック素材です。

扱いやすさと汎用性の高さから、プラスチック素材のなかでも使用量が比較的高い素材だと言えるでしょう。金型形成・切削加工だけでなく、印刷・接着などにも適しています。

理化学機器においては、樹脂板やニードルバルブなどの素材としても使用されます。

 

2.プラスチック容器を滅菌処理する場合の注意点

実験や製造の過程で、熱を用いてプラスチック容器を滅菌処理する場合は、容器の耐熱温度に注意が必要です。

ここでは、一般的に良く用いられる乾熱滅菌とオートクレーブの2つの滅菌方法について、注意点をそれぞれ解説します。

〇乾熱滅菌
乾熱滅菌とは、電気オーブンを使用した滅菌方法のことです。乾熱滅菌で滅菌するためには、下記のように加熱温度に応じた所要時間が必要となります。

160~170℃:120分
170~180℃:60分
180~190℃:30分

加熱温度が高いほど、所要時間は短くなります。そのため、短時間で滅菌する場合には、使用するプラスチック容器の耐熱温度に特に注意が必要です。

〇オートクレーブ
オートクレーブとは、巨大な圧力釜のような専用機器を用いて、高温の蒸気で加熱滅菌を行う方法のことです。一般的なオートクレーブでは、121℃で15~20分間の滅菌処理が行われます。

耐熱温度は乾熱滅菌より低くても問題はないものの、圧力をかけるため容器の耐圧性にも注意しておきましょう。

乾熱滅菌・オートクレーブは、プラスチック容器の素材によって適性が異なります。下記表に、プラスチック容器に使用される代表的な素材の可否をまとめました。

素材 乾熱滅菌 オートクレーブ
フッ素樹脂(PTFE・PFA)
フッ素樹脂(PVDF) ×
ポリプロピレン(PP) ×
ポリカーボネート(PC) × 〇(※1)
ポリエチレン(PE) × ×

(※1:滅菌によって機械的強度が低下するため、吸引には使用しない)

フッ素樹脂(PFA)であれば、260℃の耐熱性を持ち、耐圧1.0Mpaを越える製品も販売されているため、乾熱滅菌・オートクレーブ両方の滅菌処理に耐えることができます。

耐熱性や耐圧性は、容器の形状や厚さなどで異なる場合もあるため、プラスチック容器を選ぶ際は耐久性にある程度の余裕を持たせて選ぶようにしましょう。

 

まとめ

プラスチック素材には多くの種類が存在しており、耐熱温度や素材の特徴もそれぞれ異なります。そのため、実験・製造に使用するプラスチック容器は、用途に耐えうる素材を使用したプラスチック容器を選ぶことが必要です。

特に、オートクレーブによる滅菌処理を行う必要がある場合は、高圧・高温による負荷が容器にかかるため、耐熱性だけでなく耐圧性についても注意しましょう。

プラスチック容器の購入を考えている方は、今回の情報を参考に、ぜひ用途に適したプラスチック容器を「サンプラテック」でお探しください。

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