プラスチックの主な電気特性3つ|測定指標5つ・静電気の危険性も
大学の研究室や企業の開発・製造・包材部門などで、プラスチックを用いる場合に確認しなければならない項目が、「プラスチックの電気特性」です。
プラスチックは種類によって通電性や電圧耐久力が異なります。そのため、安全に実験・業務を進めるためには、電気特性について理解を深めた上で、用途に合った素材を選ぶことが大切です。
今回は、プラスチックの主な電気特性から、電気特性を測定する主な指標、プラスチックに帯電する静電気の危険性まで解説します。
1.プラスチックの主な電気特性3つ
プラスチックには様々な性質があり、温度・湿度などの影響を大きく受けます。そのため、プラスチックを取り扱う際は、素材の性質を事前に理解することが重要です。
プラスチックの性質は、「機械的性質」「熱的性質」「化学的性質」「電気的性質」「物理的性質」という5つの性質に分けられます。
以下では、プラスチックが持つ「電気的性質」の特性について解説します。
1-1.絶縁性
絶縁性とは「電気や熱を通しにくい」性質のことで、絶縁性を持つ物質を「絶縁体」と呼びます。程度の差はあるものの、ポリエチレンやポリプロピレンをはじめとするほとんどのプラスチック素材は絶縁性を有しています。
プラスチック素材の中でも、フェノール樹脂・エポキシガラスは絶縁性に優れており、電気製品の絶縁体としてよく用いられている素材です。
特にフェノール樹脂の一種である「ベークライト」は、比較的安価であり、高い絶縁性を誇ることから、電気製品の部品や基板に多く使用されています。
1-2.帯電性
帯電性とは「静電気がたまりやすい性質」のことで、電荷が減少しない状態を指します。また、帯電性が原因となって発生する現象の一つが「静電気」です。
化学・機械工業などでは、あらゆるフェーズで静電気トラブルが発生する恐れがあるため、近年では帯電防止剤なども開発されています。
1-3.誘電性
誘電性とは「電気を通さず、電気を物質に蓄える性質」のことです。
絶縁体の中にも電圧をかけると、内部の電子が表面に誘導され、誘導分極が現れる素材があります。誘導分極が現れる性質がある物質を「誘電体」と呼びます。
誘電性は、導電性と絶縁性の中間のような性質と言われ、誘電性の大きさは「比誘電率」などの単位で計測されます。
2.プラスチックの電気特性を測定する主な指標5つ
プラスチックの各電気特性は、電気的性質に関する指標を用いることで測定が可能です。
以下では、プラスチックの電気特性を測定する際に使用される5つの指標と、各性質に優れたプラスチックの素材例について解説します。プラスチック素材を選定・比較する際に、ぜひ役立ててください。
2-1.絶縁破壊強さ
絶縁破壊強さとは、「絶縁体にどの程度の電圧がかかったら、絶縁体が破壊されて絶縁性を失い、電流が流れるようになるか」を示す指標です。
絶縁体が破壊されるときの電圧を「絶縁破壊電圧」と呼び、絶縁破壊電圧を「絶縁体素材の厚み」で割った値が絶縁破壊強さとなります。一般的に絶縁体として使用する素材は、絶縁破壊強さが強いほど理想的な素材として扱われます。
絶縁破壊強さに優れた素材としては、以下が挙げられます。
- ポリエチレン
- 架橋ポリエチレン
- ポリプロピレン
プラスチック素材を絶縁体として使用する場合は、ある程度の電圧に耐える絶縁性が必要です。そのため絶縁破壊強さは、素材を選定する際に重要な確認項目となります。
2-2.体積抵抗率
体積抵抗率とは、「単位体積あたりの電気抵抗値」です。体積抵抗率は、素材全体の電気抵抗値に断面積をかけて、素材の長さで割ることで求められます。
素材の電気抵抗値は、素材の長さが同じであれば体積抵抗率の大きさに比例します。そのため、物質の体積抵抗率を比較することで、各素材の絶縁性をある程度把握することが可能です。
体積抵抗率の大きなプラスチック素材としては、以下が挙げられます。
- 架橋ビニル
- ポリエチレン
- 架橋ポリエチレン
- ポリプロピレン
- 四フッ化エチレン
- 六フッ化プロピレン
■電気抵抗値レンジのイメージ(参考)
2-3.耐アーク性
耐アーク性とは「アーク放電に対する劣化耐性」のことです。またアーク放電とは、電位差がある電極間に継続的に発生する絶縁破壊・放電現象を指します。
アーク放電が発生すると、高温により素材の分解・炭化が起こり、炭化した部分は導電路となります。炭化した導電路ができる現象を「アークトラッキング」呼び、アークトラッキングが発生してからアークが消滅するまでの時間(秒)が、「耐アーク性」の値となります。
耐アーク性に優れたプラスチック素材には、以下が挙げられます。
- ポリテトラフルオロエチレン
- テフロン
- ダイフロン
- フルオン
耐アーク性が強いプラスチックは、基本的にベンゼン環を有しておらず、主鎖の途中にN(窒素)・O(酸素)などの元素が結合した「アミノ樹脂」が多い傾向です。
2-4.誘電率
誘電率とは、「素材が蓄えられる電気量の大きさ」を示す指標です。
素材を絶縁体に使用する場合は、電気がたまる量は少ないほどよいため、誘電率は低いほうがよい素材と言えます。一方で、コンデンサはより多くの電気を蓄えることが求められるため、誘電率が高いほうが好まれます。
誘電率が低いプラスチック素材は、以下が挙げられます。
- フルオン
- テフゼル
- テフロン
- ポリエチレン
また、絶縁体の誘電率と真空の誘電率との比である「比誘電率」も、絶縁体の性能を測定する指標としてよく使用されます。
2-5.誘電正接
誘電正接とは、「絶縁体の内部で電気エネルギーが失われる度合」を示す指標です。
絶縁体は交流電圧を加えると、絶縁体内部では「誘電損」と呼ばれる電気エネルギーの一部が熱エネルギーに変換される現象が起こります。よって誘電正接は、充電される電流と失われる電流の比率(損失電流÷充電電流)で示されます。
誘電正接が優れているプラスチック素材としては、以下が挙げられます。
- ポリエーテル・エーテル・ケトン
- ポリアミドイミド
- ポリエチレン
プラスチックを絶縁体として用いる際は、電気エネルギー損失が少ないほうが好ましいため、誘電正接の値が小さい素材を選ぶとよいでしょう。
3.プラスチックに帯電する静電気の危険性
プラスチックを取り扱う際には「静電気」に注意が必要です。プラスチック素材は、マイナスに帯電しやすいという性質があります。
プラスチック素材に帯電する静電気は、以下のような悪影響を及ぼし、事故の原因となる恐れがあります。
- 電子部品に悪影響を及ぼす
- 電気製品・電子機器が破損する
- 製品にゴミ・ホコリが付着する
- 放電によって爆発事故が発生する
- プラスチック容器の内容物に影響を及ぼす
特に、精密な電子部品や電子機器の場合は、わずかな静電気でも破損や動作不良の原因となるため、静電気の対策は必須です。
3-1.静電気事故を防ぐためのポイント
静電気による爆発の危険を防ぐためには、帯電防止機能が付帯した器具を使用することが大切です。また消耗品・消耗器具の場合でも、事故リスクを抑えるために、静電気対策が行える器具を使用しましょう。
サンプラテックでは、帯電防止容器をラインナップしています。サンプラテックの帯電防止容器は、本体からキャップ・中栓に至るまで、帯電防止仕様となっています。
プラスチック容器などの消耗品に対する静電気対策は、まだまだ浸透していない状況です。安全に実験や仕事を行うためにも、ぜひ帯電防止容器をご利用ください。