2021.9.2 容器機能

ポリプロピレンとは?耐熱性・耐薬品性や代表的なPP製容器を紹介

ポリプロピレンとは?耐熱性・耐薬品性や代表的なPP製容器を紹介

ポリプロピレンは人工的に合成された樹脂の一種で、耐熱性・耐薬品性で優れた性質を持っています。日常的に使用する樹脂製品はもちろん、産業分野においてもポリプロピレンは汎用性が高い樹脂です。

ポリプロピレンが合成樹脂であることは知っていても、具体的な性質や用途、ポリプロピレン製容器の特徴は知らない人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、ポリプロピレンの基礎知識から、ポリプロピレン製容器の耐熱性・耐薬品性、理化学分野で使用する代表的なポリプロピレン製容器までを紹介します。

 

1.ポリプロピレンとは?

ポリプロピレンとは、プロピレンを重合させることで作られる熱可塑性樹脂のことです。ポリプロピレンの略称は「PP」で、化学式はプロピレン(C3H6)の重合で示されます。

●ポリプロピレンの化学式

(C3H6)n

ポリプロピレンは軽量で加工性がよく、汎用樹脂の中では比較的高い強度を持つ物質です。ここでは、ポリプロピレンの特徴と主な用途を紹介します。

 

1-1.ポリプロピレンの特徴

ポリプロピレンは、同じ熱可塑性樹脂であるポリエチレンに性質が近く、ポリエチレンと混同されることも多い物質です。ここでは、ポリプロピレンの性質を5つのカテゴリーに分けて、ポリエチレンとの違いも含めて解説します。

物理的性質
ポリプロピレンは色味が透明~不透明で、光沢性のある無色透明フィルムを作ることができます。ポリプロピレンの比重(単位:グラム毎立方センチメートル)は0.90~0.91であり、低密度ポリエチレンの比重0.91~0.92よりも軽量です。
機械的性質
ポリプロピレンは、機械的性質において優れた強度を示します。一例として引張強さ(単位:Mpa)を挙げると、ポリプロピレンの引張強さは31~41です。強度が高いことで知られる高密度ポリエチレンの引張強さは23~31であり、ポリプロピレンはポリエチレンよりも機械的性質で優れていることが分かります。
熱的性質
ポリプロピレンの耐熱温度(単位:℃)は121~160であり、樹脂の中でも比較的高い耐熱性を持つ物質です。高密度ポリエチレンの耐熱温度は121であり、ポリエチレンよりも熱的性質で優れています。
電気的性質
ポリプロピレンは基本的に絶縁性の高い樹脂です。ポリプロピレンの1MHzにおける比誘電率(単位:εγ)は2.2~2.6と低く、静電エネルギーを多く蓄えません。低密度ポリエチレンの1MHzにおける比誘電率は2.25~2.35であり、ポリプロピレンはポリエチレンと同等の絶縁性を持ちます。
化学的性質
ポリプロピレンの化学的性質としては、吸水性の低さが大きな特徴です。ポリプロピレンを24時間吸水させたときの吸水性(単位:%)は0.01~0.03であり、ほとんど水分の影響を受けません。一方で日光に当たると白化が生じるなど、紫外線で劣化しやすい欠点もあります。

 

1-2.ポリプロピレンの主な用途

ポリプロピレンは、軽量かつ高い強度・耐熱性があるなど、優れた性質を多く持っています。成形加工性がよく、安価に大量生産もできるため、製品材料としても優秀です。

ポリプロピレンの主な用途としては、下記のものがあります。

  • 食品容器
  • 食品包装
  • 電子レンジ対応容器
  • PPフィルム・袋
  • 発泡緩衝材
  • 電子製品の外装や自動車用部品
  • ケーブル被覆
  • 注射器シリンジ
  • コップやバケツなどの日用品
  • 哺乳瓶
  • 不織布

ポリプロピレンは、頑丈さが求められる製品や、オートクレーブや煮沸消毒、加熱をして使用する製品に使用されています。紫外線に晒されると劣化しやすい性質により屋外使用には適さないものの、日常用途から医療用途・工業用途まで、幅広い用途で使用されている物質です。

 

2.ポリプロピレン製容器の耐熱性・耐薬品性

ポリプロピレン製容器は、軽量でありながら高い強度を持ち、保存容器として高い汎用性を持っています。ポリプロピレンは結晶化度が低い樹脂であり、透明度が高い容器を作れることも大きな特徴です。

下記では、ポリプロピレン製容器の耐熱性と耐薬品性について、詳しく紹介します。

耐熱性
ポリプロピレン製容器の耐熱温度は、原材料のポリプロピレンと同じ121℃です。容器に熱湯を入れてもポリプロピレンは溶融や変形が起こりません。高温の飽和水蒸気で滅菌処理を行うオートクレーブも可能です。
耐薬品性
  • 無機酸
    ポリプロピレン製容器は、亜硫酸・塩酸・次亜塩素酸・リン酸など多くの無機酸を安全に保管できます。ただし、クロム酸・クロロスルホン酸などは容器に影響を及ぼすため、使用に適しません。
  • 無機アルカリ
    ポリプロピレン製容器は、無機アルカリのほとんどを安全に保管できます。無水アンモニア・カ性ソーダ・水酸化カリウム・水酸化マグネシウムなどが、安全に保管できる薬品です。
  • 有機溶剤
    ポリプロピレン製容器は、一部薬品を除き、基本的に有機溶剤の保管に適していません。ポリプロピレン製容器で安全に保管できる有機溶剤は、アセチレン・ジエチレングリコール・ギ酸・ナフタリン・ホルムアルデヒドなどです。
  • その他油類・ガス類
    ポリプロピレン製容器は、一部薬品を除き、その他油類・ガス類の多くを安全に保管できます。安全に保管できる薬品としては、亜硫酸ガス・液化石油ガス・塩化イオウ・ブタンなどが代表的です。一方、液体塩素・塩化チオニル・臭素・二硫化炭素は、ポリプロピレン製容器での保管に適しません。

 

3.理化学分野で使用する主なポリプロピレン製容器6つ

ポリプロピレン製容器は、ポリエチレン製容器と比較して耐熱性・耐薬品性に優れた容器です。理化学分野では、ポリエチレン製容器が適さない薬液を使用したり、オートクレーブが必要な作業をしたりするときに、ポリプロピレン製容器を使用します。

また、ポリプロピレン製容器は透明度が高く、内容物を確認しながら作業できる透明容器としてもおすすめです。

下記では、理化学分野で使用する主なポリプロピレン製容器を6つ紹介します。

サンプラ(R)PPボトル広口

サンプラ(R)PPボトル広口は、透明度の高いポリプロピレンを使用した広口瓶です。広い口径は薬品を出し入れしやすく、中栓がないため作業性にも優れています

EOG滅菌瓶(PP広口)

EOG滅菌瓶(PP広口)は、酸化エチレンガスで滅菌処理済みの容器です。容器はフタを外した状態で個装パックされており、水質検査の採水瓶や商品開発用のサンプル瓶として使用できます。

角瓶A型

角瓶A型は、省スペースでの保管に便利な角型タイプの容器です。中栓付きで、薬品の流出・混合を防いで保管できます。

U-8タイプ容器

U-8タイプ容器は、ゲルマニウム測定に用いる土壌採取用に適した、ディスポタイプの容器です。ポリプロピレンは強度が高く、土壌へと差し込むときに破損する可能性を抑えられます。

ブックボトルコック付

ブックボトルコック付は、収納棚に整頓して設置できるブック形状の容器です。活栓コック付なので、薬品の小分け作業を効率よく行えます。

サンプラ(R)カップ

サンプラ(R)カップは、両側目盛付きで計量しやすく、注ぎ口で薬液の移動もしやすいカップ容器です。積み重ねて保管できて場所を取らず、医療現場や工場での計量・調合作業に適しています。

ポリプロピレン製容器の中には、キャップ・中栓にポリエチレンを使用している製品も存在します。ポリエチレンの耐熱温度は約80℃であるため、オートクレーブを行うときはポリエチレン製のパーツを外してください。

 

まとめ

ポリプロピレンはプロピレンの重合で作られる合成樹脂であり、高い耐熱性・耐薬品性を持つことが特徴です。ポリプロピレン製容器は透明度が高く、オートクレーブも可能であり、理化学分野でもボトルや容器に多く使用されています。

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