樹脂の成型不良・欠損がおこる理由|主なパターン8種類
樹脂成型は非常にデリケートな製造技術であるため、さまざまなことが原因で、表面不良や形状不良が発生します。また、射出成型・ブロー成型・押出成型など成型方法が異なれば発生しうる成型不良・欠損が変化するため、正しい知識をもとに最適な対策を検討することが大切です。
この記事では、樹脂の成型不良・欠損の主なパターンと要因・解決事例、およびPFAボトルについて紹介します。樹脂の成型不良・欠損について深く理解したい方は、ぜひ参考にしてください。
1.樹脂の成型不良・欠損がおこる理由は?
樹脂を成型する際には、ペレットや粉末状の樹脂をホッパーから注入して加熱し、液体状に溶かしたものを金型などに入れて固めて、目的の形状へと変化させます。樹脂の成型方法にはさまざまな種類があり、素材の性質に応じた方法を採用することが原則です。
たとえば、熱可塑性樹脂の場合、以下のような成型方法が採用されます。
- 射出成型
- ブロー成型(押出ブロー成型・射出ブロー成型・延伸ブロー成型など)
- 押出成型(Tダイ法、インフレーション法)
- 真空成型
- カレンダー成型
素材の充填量や充填速度、加熱温度などの管理が不十分である場合、成型不良・欠損が発生します。成型過程においてほこりやゴミなどの異物が付着することも、成型不良・欠損を引き起こす原因です。その他、機械の設定ミスなどの人的要因、金型設計の誤りや離型抵抗によっても、成型不良・欠損が発生します。
2.樹脂における表面不良・形状不良の主なパターン8つ
樹脂の成型不良・欠損を引き起こすリスクは、成型工程全体に存在します。成型不良・欠損を最小限に抑えるためには、発生しうるトラブルの代表的なパターンを理解するとともに、原因ごとの改善事例を知ることが必要です。
以下では、樹脂製容器などの成型時によく見られる不良・欠損の症状と原因、改善事例を解説します。
2-1.シンクマーク(ヒケ)
シンクマーク(ヒケ)とは、樹脂成型品の表面に凹み(溝)が発生する現象です。樹脂材料は、金型に入れて冷却固化される際に収縮します。その際、表面と内部が不均一に冷却されてしまい、樹脂の収縮差が生まれることで、シンクマークが発生します。
シンクマークの解決方法は状況によって異なるものの、以下のような対策を検討するとよいでしょう。
- 樹脂製品の厚みを均一化する
- 金型温度を調整する
- 射出圧力を高めて、材料供給量を増やす
- 低粘度の材料を使用する
樹脂素材を冷却固化する際の冷え方を均一化し、シンクマークの発生を防ぎましょう。
2-2.バリ
バリとは、樹脂成型に使用する金型の隙間に素材が流れ込み、部品の形状の外側に樹脂がはみ出すことです。バリの主な原因として、以下の項目が挙げられます。
- 射出圧力が高い
- 射出速度が早い
- 型締力が不足している
- 樹脂の充填量が多い
バリを防ぐ対策としては、射出圧力や射出速度、樹脂の充填量を適正水準に変更する・型締力を上げるなどの方法が挙げられます。
2-3.そり・ねじれ・曲がり・われ
そり・ねじれ・曲がり・われとは、樹脂が歪む・ねじれるなど外観上の問題が発生するトラブルです。そり・ねじれ・曲がり・われは主に、射出時の「残留応力」によって発生します。
そりやねじれなどを防ぐための対策としては、金型表面の摩擦抵抗を減らす処理を行うことがおすすめです。また、温度条件によってそりなどが発生している場合は、冷却時間を長くしたり、金型自体の温度を下げたりすることが有効となります。
2-4.ウェルドライン
ウェルドラインとは、樹脂の表面にスジ状の傷が入るトラブルです。ウェルドラインが入ると樹脂の強度低下・寸法精度の不良・塗料やメッキなどの密着不良などを引き起こす恐れがあります。
ウェルドラインは、液体状に溶かした樹脂が合流する際に材料温度が低下し、溶着不良を起こした際に発生しやすいです。また成型品金型の不具合によって、ウェルドラインが生じる場合もあります。
ウェルドラインを防ぐためには、以下のような対策方法を検討しましょう。
- ゲート位置を変更する
- バルブゲートを使用する
- ウェルドラインが発生しやすい位置に捨てキャビティを活用する
なお、ウェルドラインは溶接素材の流動性の不具合によっても発生します。流動性の不具合が疑われる場合は、シリンダーの温度を上げる・素材自体を変更するなどの対策がおすすめです。
2-5.黒点・コンタミ
黒点・コンタミとは、樹脂に黒もしくは茶色の異物が混入するトラブルです。黒点・コンタミは、スクリュー表面に付着して焦げた樹脂・残留パージ剤が、製品内部に混入することによって発生します。
黒点・コンタミの解決策としては、機械をこまめに分解し、清掃する方法を検討しましょう。スクリューにダメージを残さず、効率的に機械のメンテナンスを行うためには、スクリュー洗浄を検討することも一つの手段です。
また、乾燥時間が長すぎると変色する場合もあるため、併せて注意してください。
2-6.偏肉
偏肉とは樹脂の上部と下部の厚みに偏りが見られるトラブルで、主にブロー成型において発生します。押出ブロー成型の場合、ホットパリソンを押し出して成型する際の温度が高すぎることによってドローダウンが発生し、偏肉を引き起こす仕組みです。延伸ブロー成型の場合は、コールドパリソンの温度管理が不十分であると、偏肉を発生させる恐れがあります。
いずれのトラブルに対しても、ブロー工程前の樹脂温度を適正に管理する対策が有効です。具体的には、放射温度センサを導入し、樹脂の温度を適正に管理する方法が挙げられます。
2-7.気泡
気泡とは、樹脂の内部に空洞が発生するトラブルです。透明の樹脂製容器の場合は見栄えが悪くなることに加えて、気泡部分に応力が集中すると、割れ不良を起こすケースがあります。
気泡の主な発生原因は、樹脂成型過程で空気やガスを巻き込むことです。空気やガスの巻き込みを防ぐためには、射出速度を調整する方法や、金型にガス抜きを追加する方法が検討されます。また、材料が熱分解を起こしている場合は、成型温度を下げたり、成型サイクルを短くしたりすることも一つの手段です。
2-8.シルバーストリーク
シルバーストリークとは、樹脂の表面に銀色の筋が発生するトラブルです。シルバーストリークは樹脂内部に含有する空気やガス、水分が表面に現れることで発生します。シルバーストリークを防ぐために検討できる対策は、以下のような内容です。
- 樹脂素材の予備乾燥を十分に実施する
- 射出速度を遅くする
- シリンダーの回転数を下げる
- スクリュー内の停滞時間を短縮する
また、シルバーストリークは、金型の問題によって発生することもあります。具体的には、ガス抜きが悪い・ゲートの位置が不適であるなどの問題です。金型の問題が疑われる場合はガス抜きを作成したりゲートの位置を調整したりする方法で、トラブルを解消できるケースがあります。
3.高品質・高性能なフッ素樹脂製容器「PFAボトル」
サンプラテックでは、PFA素材を使用した樹脂製容器「PFAボトル」を扱っています。PFAボトルは他の樹脂製容器と比較し、耐熱性や耐薬品性の他、あらゆる機能で高い性能を持つことから、高度なクリーンレベルを要求されるシーンにおいて重宝される製品です。そのため、製品自体の品質にも高いレベルが求められます。
サンプラテックのPFAボトルは、最新の検査機器を使用して1点1点自動検査を実施するだけでなく、自動検査日を明記した上で個包装にて納品しています。
半導体分野や高度な試薬を扱う場面で、安心してPFAボトルを使用したい人は、ぜひサンプラテックのPFAボトルをご利用ください。
まとめ
樹脂の成型不良・欠損は、充填量や充填速度、加熱温度の管理の不備や異物の付着によって発生します。ウェルドラインや黒点・コンタミ、気泡など、成型不良・欠損には数多くの種類があるため、それぞれに応じた対応を行うことが大切です。
サンプラテックのPFAボトルは、最新の検査機器で1点ずつ検査し個包装することで、高い品質を保持しています。PFAボトルについてより詳しく知りたい場合は、実験・研究・製造現場のプラスチック製ボトル専用サイト「IREMONO」で紹介しているため、併せてご参考ください。