食品衛生法のポジティブリスト制度に適合するプラスチック容器とは
プラスチック(樹脂)製の器具や容器は、食品や医薬品、半導体、電気電子機器など様々な分野のものづくりを支える資材の1つです。食品は人間の体内に入るものであるため、製造・梱包に使用できる樹脂素材の種類は、食品衛生法などの法律で規制されていることに注意しましょう。
この記事では、食品衛生法における「食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度」について解説します。ポジティブリスト制度の概要を知り、影響や変更点、対象となる合成樹脂の範囲などを理解した上で、適切な対応ができるように確認しましょう。
1.改正食品衛生法による「食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度」
食品の製造・包装には、プラスチック(樹脂)や紙、ガラスなど様々な素材が関わっていますが、素材の種類によっては消費者の健康に影響が出る可能性があります。日本では「食品衛生法」のネガティブリスト制度で使用禁止物質を定め、危険な物質を含む素材の使用を禁止し、健康被害の発生を防いできました。
しかし、ネガティブリスト制度には、使用禁止に指定されていなければ、安全性が確立していない素材でも食品用器具や容器包装に利用できるという欠点・課題があります。そこで、2018年に改正された食品衛生法によって、2020年からネガティブリスト制度に代わり、「ポジティブリスト制度」が採用されることとなりました。
■ネガティブリスト制度とポジティブリスト制度の違い
ネガティブリスト制度(改正前) |
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原則的に使用を許可した上で、有害性などを評価し、使用を禁止するもの・制限するものを規定する制度。海外で使用禁止とされている物質でも、日本の規制対象外であれば、基準を定めない限りすぐに規制することはできない。 |
ポジティブリスト制度(改正後) |
全ての素材を原則使用禁止とした上で、使用可能物質を規定して、安全性が認められたもののみ使用許可となる制度。 |
それでは、食品衛生法改正に伴うポジティブリスト制度の導入・整備によって、食品用器具や食品包装にはどのような影響・変更点があるのでしょうか。食品用器具・食品包装の国際的な状況も併せて確認しましょう。
1-1.自主規制から法規制へ
2018年の食品衛生法改正により、食品用器具・食品包装に関する規制の運用方式は、2020年にネガティブリスト方式からポジティブリスト方式へ変更されました。しかし、2020年以前においても、ネガティブリスト制度におけるリスト外の物質を含む素材を無規制で使用していたわけではありません。
2020年の導入以前にも、食品用器具・食品包装に関わる業界団体・製造業者が自主基準としてポジティブリストを作成し、既存物質の使用制限・自主管理を行ってきました。2018年の法改正により、自主規制に任せていた部分が法律による規制へとレベルが変更されたため、より厳格に守るべき品質管理の基準へと改善されたといえるでしょう。
1-2.食品用器具・容器包装に関する規制の国際的状況
日本では、食品用器具・容器包装に関する規制はネガティブリスト制度によって管理されていましたが、世界の多くの国々ではポジティブリスト制度が採用されていました。そのため、「日本では使用可能・海外では規制対象」といった物質を使用していないか、リスク評価・整合性チェックをするなどの手間がかかるといった意見があります。
2018年の食品衛生法改正により、日本でも2020年にポジティブリスト制度が導入されたため、多くの国々とのビジネスがより一層スムーズに進められるようになりました。国際基準に適合した、国際整合性の高いルールであるため、現在ネガティブリストを採用している国と輸出・輸入の取引をする際も、円滑なやりとりが可能となっています。
2.制度の対象は合成樹脂容器
食品用器具・容器包装には、様々な種類の素材が使用されています。しかし、2020年に導入されたポジティブリスト制度は、全ての素材を対象としたものではないことに注意しましょう。
ここでは、食品用器具・容器包装におけるポジティブリスト制度の対象範囲および対象物質について解説します。制度の対象について詳しく確認し、適切な対応をとれるようにしてください。
2-1.対象の範囲
食品用器具・容器包装におけるポジティブリスト制度は、どのような素材・材質を対象とする制度なのでしょうか。ここでは、対象の範囲となる素材について概要を確認しましょう。
■ポジティブリスト制度の対象範囲
対象となる素材 |
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対象の範囲外となる素材 |
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2020年に導入されたポジティブリストの対象は「合成樹脂」であり、紙や木など合成樹脂以外の素材は対象外となります。ただし、合成樹脂以外の素材も段階的にポジティブリストに適応させていく予定であることに留意しましょう。
2-2.対象となる合成樹脂
合成樹脂の製品製造を行う際には、原料となる様々な化学物質を反応させる必要があります。それでは、合成樹脂を製造する過程で関わる物質について、ポジティブリスト制度の対象にはどのような物質が該当するのでしょうか。
■ポジティブリスト制度の対象樹脂
対象となる物質 |
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対象の範囲外となる物質 |
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なお、対象の範囲外となる物質は、従来通りの規格基準の管理方法(ネガティブリスト制度)によって規制されます。着色料(着色剤)も従来の規格の範囲内で使用できるというポイントにも留意しましょう。
2-3.ポジティブリストの内容
食品用器具・容器包装に使用する合成樹脂の種類を選定する際には、ポジティブリストにどのような種類の樹脂が掲載されているかを把握することが重要です。
■食品用器具・食品包装におけるポジティブリストに掲載された物質名
ポリオレフィン等衛生協議会 ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリブテン-1(PB-1)、ブタジエン樹脂(BDR)、エチレン・テトラシクロドデセン・コポリマー(ETD)、エチレン・2-ノルボルネン樹脂(ENB)、ポリスチレン(PS)、AS 樹脂(AS)、ABS 樹脂(ABS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ふっ素樹脂(FR)、ポリメタクリルスチレン(MS)、メタクリル樹脂(PMMA)、ナイロン(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアリルサルホン(PASF)、ポリアリレート(PAR)、ヒドロキシ安息香酸ポリエステル(HBP)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエステルカーボネート(PPC)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS) 塩ビ食品衛生協議会 ポリ塩化ビニル(PVC) 塩化ビニリデン衛生協議会 ポリ塩化ビニリデン(PVDC)
引用:厚生労働省「ポリオレフィン等衛生協議会、塩ビ食品衛生協議会、塩化ビニリデン衛生協議会 ポジティブリスト(概要)」
上記のポジティブリストの内容をよく確認した上で、製造管理の手法や製品に合わせて適切なものを選ぶようにしましょう。
3.食品衛生法に適合した高機能樹脂TPX(R)
食品製造で使用する容器や器具は、食品衛生法による規制に適合した素材を使用する必要があります。適合していない素材を使用することは、食の安全性や企業のコンプライアンスといった面で問題があるため、必ず規制内容を守るようにしましょう。
特に、実験での使用をメインとした樹脂製容器では、食品衛生法に適合していないケースがあります。食品衛生法に適合しているかどうかが不明である場合には、樹脂製容器の製造メーカー・加工業者に品質規格などを問い合わせて、評価を確認するとよいでしょう。
高機能樹脂「TPX(R)」は、食品衛生法の基準を満たした樹脂です。食品製造でも使用可能な高い安全性を持つほか、すぐれた耐熱性や透明性、数透過性を発揮する樹脂のため、容器だけでなく実験器具などでも使用されています。ここでは、TPX(R)製の樹脂製器具を4つ紹介します。
■サンプラ(R) TPX(R)メスシリンダー
透明性や耐熱性、耐薬品性に優れたTPX(R)製のメスシリンダーです。10mlから2Lまでの9種類のサイズがあり、測る液体の体積や用途に応じた使い方ができます。
■サンプラ(R) TPX(R)手付ビーカー
「サンプラ(R)TPX(R)手付ビーカー」は、耐薬品性・耐熱性が高い透明ビーカーです。100mlから5Lまでの8種類のビーカーが販売されており、底面内側が平面となっているため、スターラーでの撹拌もスムーズに行えます。
■TPX(R)ハイスピードロート
「TPX(R)ハイスピードロート」は、透明性・耐熱性・耐薬品性に優れたロートであり、直径60mmから直径240mmのものまでの8種類が展開されています。高速ろ化に適しているため、製造や実験の際には便利に活用できるでしょう。
■TPX(R)シャーレ
「TPX(R)シャーレ」は、耐薬品性・耐熱性に優れた樹脂製シャーレです。オートクレーブを使用できる素材であり、繰り返し利用できるというメリットがあります。
まとめ
2018年の食品衛生法改正によって、2020年より食品用器具・容器包装に使用される合成樹脂について、ポジティブリスト制度が導入されました。規制対象物質の規制方式の変更により、食の安全性の確保・向上とともに、ビジネスの円滑化が期待されています。ポジティブリストの内容を確認し、適切な素材を選ぶようにしましょう。
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