2021.4.1 IREMONOニュース

クリーンルームとは?クリーンブースとの違い・使用可能な樹脂容器

クリーンルームとは?クリーンブースとの違い・使用可能な樹脂容器

製薬会社・電子部品などの製造工場・大学研究室などは、クリーンルームと呼ばれる設備を設けていることが多くあります。クリーンルームは、ルーム内の発塵量・エアフィルター・換気回数・気流性状などによって、清浄度が決まります。

クリーンルームを普段から使用していても、クリーンルームの仕組みや種類・方式、クリーンブースとの相違点を知らない人も多いのではないでしょうか。今回はクリーンルームの概要と、クリーンルーム内で使用可能な樹脂容器について紹介します。

 

1.クリーンルームとは?

クリーンルームとは、「空気中を浮遊する汚染物質」が決められた清浄度レベル以下に管理されている空間です。持ち込まれる物品なども、必要とされる清浄度の保持が可能であり、空間内の温度・湿度・圧力などの環境管理が行われています。

「空気中を浮遊する汚染物質」とは、ホコリ・細菌などに代表される「浮遊微小粒子」「浮遊微生物」と呼ばれる物質です。一般的な室内などの環境では、目に見えない汚染物質が多く浮遊しています。

日常生活では汚染物質に細かく気を遣う必要はないものの、半導体・精密機器などの製造、研究活動などにおいて汚染物質は大敵です。クリーンルームでは、空間内の清浄度レベルが厳格に管理されるため、研究・開発・製造段階における諸問題の発生を減らすことができます。

 

1-1.クリーンルームの4原則

クリーンルームを使用する際は、以下に示す「クリーンルームの4原則」を遵守しましょう。

持ち込まない ・持ち込む材料や備品は洗浄する
・室外の空気が流れ込まないよう空室制御を行う
・使用者はエアシャワー後に入室する
発生させない ・無塵衣を着用する
・発塵しやすい材料などを使わない
・ムダな動きを減らす
堆積させない ・ゴミが清掃しにくい構造を作らない
・ダクトや配管などの室内露出を減らす
・帯電させない、除電を行う
排除する ・こまめに換気する
・発塵部の近くで排気を取る
・汚染物質が製品などに付着しないよう気流形状を作る

クリーンルームの4原則は清浄度を維持するためのルールです。使用者はクリーンルームの4原則に沿って行動し、空間内の清浄度維持を心掛けましょう。

 

1-2.クリーンルームと「クリーンブース」の違い

クリーンルームのように、清浄度が高い空間を作れる設備として「クリーンブース」があります。クリーンルームとクリーンブースの主な違いは、「壁材」と「空調」の有無です。

クリーンルームは、壁材に断熱パネルが使用されており、ルーム内の温度が外気に影響されない環境を作り出せます。空調設備によってルーム内の空気を循環させ、高性能フィルターによって塵埃を排除できることが特徴です。内部の温湿度管理をしたり、差圧ダンパーの開閉で室圧を管理したりもできます。

一方でクリーンブースは、壁材がありません。アルミフレームの周囲をビニールシートで囲い、ブース内外を区分けしていることが特徴です。高度な空調設備も基本的になく、天井部に取り付けたファンフィルタユニットが清浄な空気を下へと流し、ブース下部から排出する仕組みとなっています。クリーンブースはクリーンルームよりも簡易に現場設置ができるものの、細かな温度・湿度・室圧管理などは行えません。

 

1-3.クリーンルームの清浄度規格

クリーンルームは、その空間の清浄度合いにより「清浄度」の等級が分けられています。この等級分けは、1963年にアメリカで「米国連邦規格」として制定されたことから始まりました。

現在では、米国連邦規格・JIS規格・ISO規格が主に用いられていますが、米国連邦規格は2001年に廃止となっています。しかし、古くから用いられてきた規格であることから、今でも「100クラス」などといった米国連邦規格ならではの言葉が浸透しています。

また、JIS規格はISOを全面的に採用していることが特徴です。

清浄度クラス 次の対象粒径以上の粒子に対する上限粒子数濃度(個/m3)
JIS規格
ISO規格
米国連邦規格 0.1μm 0.2μm 0.3μm
1 102
2 1002410
3 1 1,000237102
4 10 10,0002,3701,020
5 100 100,00023,70010,200
6 1,000 1,000,000237,000102,000
7 10,000
8 100,000
9
清浄度クラス 次の対象粒径以上の粒子に対する上限粒子数濃度(個/m3)
JIS規格
ISO規格
米国連邦規格 0.5μm 1μm 5μm
1
2 4
3 1 358
4 10 35283
5 100 3,520832
6 1,000 35,2008,320293
7 10,000 352,00083,2002,930
8 100,000 3,520,000832,00023,900
9 35,200,0008,320,000293,000

また上記表赤字の数字について、JIS規格では「低濃度のためクラス分類に不適切」としており、特に基準値として使用していません。

出典:JISC 「クリーンルーム及び関連する制御環境ー第1部:浮遊粒子数濃度による空気清浄度の分類」

 

2.クリーンルームの主な種類と方式

クリーンルームにはさまざまな種類と方式が存在します。クリーンルームの種類と方式とは、それぞれ以下の違いによる分類です。

クリーンルームの種類 クリーンルームの「使用目的」による分類
クリーンルームの方式 クリーンルームの「気流方式」による分類

以下ではクリーンルームの主な種類と方式について、詳しく解説します。

 

2-1.クリーンルームの主な種類

クリーンルームの主な種類は、インダストリアルクリーンルーム(ICR)・バイオロジカルクリーンルーム(BCR)があります。

●インダストリアルクリーンルーム(ICR)

インダストリアルクリーンルーム(ICR)は工業用のクリーンルームであり、以下の分野で使用されています。

主な使用分野
  • 半導体
  • シリコンウェハー
  • フォトマスク
  • フォトレジスト
  • 液晶
  • ハードディスク
  • 精密測定器

工業品の製造・組立工程では、塵埃など空気中の浮遊微小粒子を排除することが重要です。そのため、インダストリアルクリーンルーム(ICR)では高性能エアフィルターの除塵効果を活用し、空間内の浮遊微小粒子を管理しています。

●バイオロジカルクリーンルーム(BCR)

バイオロジカルクリーンルーム(BCR)は食品・医薬品用のクリーンルームであり、以下の分野で使用されています。

主な使用分野
  • 食品製造
  • 医薬品製造・開発
  • 化粧品製造・開発
  • 病院

バイオロジカルクリーンルーム(BCR)の特徴は、主に浮遊微生物を管理することです。空気中の微生物はもちろん、床などに落下して堆積する菌や微生物の数も、限定されたレベル以下に管理することが必要となります。

このように、インダストリアルクリーンルーム(ICR)とバイオロジカルクリーンルーム(BCR)は、使用分野や管理対象が異なります。

 

2-2.クリーンルームの主な方式

クリーンルームの気流方式は、ファンフィルタユニットや気流の方向によって、以下の3つに大別できます。

●非一方向流方式

ファンフィルタユニットを天井または壁の一部に設置して気流を作り、床面近くに設置した排気口から塵埃などを排出する仕組みです。

設置するファンフィルタユニットの数を抑えられるため導入しやすいものの、気流が一方向にならず、室内の隅・床付近で汚染物質が滞留する恐れがあります。高い清浄度を求めたい場合には適さない方式です。

●垂直一方向流方式

ファンフィルタユニットを天井全面に設置することで、天井から床へと垂直一方向の気流を作る仕組みです。

床板はグレーチングであり、押し流された汚染物質は床下から排気されます。汚染物質の堆積や滞留を起こさないため、高い清浄度を維持できることがメリットです。

●水平一方向流方式

ファンフィルタユニットを部屋の壁一面に設置して、対面の壁または天井面へと排気する仕組みです。

気流が発塵物や作業者を包み込むように形成されるため、微粒子の拡散・付着を防止できるメリットがあります。ただし、排気部分に近い下流付近は気流が弱く、空気清浄度が低下する点はデメリットです。

他にも、メーカーによっては「ハイブリット局所方式」「クリーントンネル方式」などのクリーンルームを提供するケースがあります。

 

3.クリーンルーム内で使用できる樹脂容器

クリーンルームの4原則に「持ち込まない」があるように、クリーンルーム内で樹脂容器を使用する場合は、「樹脂容器が微粒子・微生物などに汚染されていないか」という点に注意しましょう。

クリーンルーム内で使用する樹脂容器は、あらかじめクリーンルーム内で洗浄された容器を使用することが推奨されています。帯電防止仕様の樹脂ボトルも、静電気による塵埃の付着を防げるため使用可能です。

サンプラテックでは純水洗浄・塩酸洗浄・フッ酸洗浄・パイロジェンフリー洗浄を施した樹脂ボトルを多数取り扱っています。規格品のクリーン洗浄容器を提供しているだけでなく、希望する容器への洗浄を特注で依頼することも可能です。

クリーンルーム内で使用できる樹脂容器は、サンプラテックの樹脂ボトルをぜひご利用ください。

 

まとめ

クリーンルームとはファンフィルタユニットによって気流を作り、空間内の清浄度管理を行う設備です。断熱パネルの壁材と空調により、クリーンブースよりも高い清浄度の維持・管理ができます。

クリーンルームは工業用のインダストリアルクリーンルームと、食品・医薬品用のバイオロジカルクリーンルームと2種類に大別が可能です。また気流方式によっても非一方向流方式や、垂直一方向流方式などに分けられます。

クリーンルーム内で樹脂容器を使用する場合は、クリーンルームの4原則の「持ち込まない」を守り、あらかじめ洗浄された容器や帯電防止仕様の容器を使用しましょう。サンプラテックでは規格品のクリーン洗浄ボトルを豊富にラインナップしている他、特注でのクリーン洗浄サービスも提供しています。

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