2025.6.25 IREMONOニュース

クリーン洗浄とは?洗浄方法や一般的な工程について徹底解説

クリーン洗浄とは?洗浄方法や一般的な工程について徹底解説

クリーン洗浄は、医療機器や半導体の製造など、微細な汚染が製品不良に直結する分野で行われる、クリーンルーム内での洗浄工程です。微粒子や金属イオン、パイロジェンなど、肉眼では確認できないレベルの汚れまでを取り除くのが、クリーン洗浄の特徴です。通常の洗浄と異なり、清浄度の厳格な管理や専用の洗浄用設備が求められるため、高度な環境と技術が求められます。

この記事では、クリーン洗浄の基本的な定義から、一般洗浄との違いや使用される主な洗浄方法、クリーンルームの特徴、洗浄工程まで解説します。

 

1. クリーン洗浄とは

クリーン洗浄とは、クリーンルーム内で物品を洗浄し、製品性能に影響を及ぼす可能性のある残留物を、可能な限り除去することです。医療機器や半導体製造装置などの、わずかな汚染すらあってはならない機器やその部品を洗浄するときに行われます。

クリーン洗浄では、微粒子や金属イオンをサブミクロン粒子単位まで測定しながら除去し、クリーンルーム内で動作しても問題ないレベルまで清浄度を保つのが一般的です。

洗浄品は清浄な袋に梱包して出荷されるため、受け取った側は袋を開けるだけでクリーンな環境に組み込める点も大きなメリットです。

 

1-1. 一般的な洗浄とクリーン洗浄の違い

一般的な洗浄では、油脂・粉じんなど目視できる汚れを落とすのに対して、クリーン洗浄でははるかに微小なレベルまで汚れを残さないのが違いです。

洗浄のレベルは、「一般洗浄」「精密洗浄」「超精密洗浄」の3段階に区分されますが、クリーン洗浄は多くの場合このうち精密洗浄以上を指すのが普通です。クリーンルーム内で使用が必要な機器や部品はわずかな残留物があっても汚染の原因になります。そのため、洗浄後も残留粒子数やイオン濃度を液中粒子カウンターで定量確認し、規格値を超えた場合はさらに洗浄処理が追加されます。

結果、洗浄後すぐにクリーンルームへ持ち込んでも汚染が再付着しにくく、製品の品質や歩留まりを高められます。

 

2. クリーン洗浄に使われる洗浄方法

クリーン洗浄では、部品の材質・汚染の種類・最終用途によって洗浄方法を使い分けるのが一般的です。以下では、代表的な4種類の洗浄方法について、それぞれの特徴を解説します。

 

2-1. 超音波洗浄

超音波洗浄は、20kHz~120kHz程度の音波を洗浄液に伝え、液中で発生する無数の微細気泡(キャビテーション)が瞬時に破裂する衝撃と液流で汚れを剥がす方法です。

周波数が低いと気泡が大きく強い衝撃が得られるため、バフ粉や頑固な油分除去に向きます。対して、高周波では衝撃がソフトになり、細線やガラス基板のような繊細な部品を傷めません。

幅広い対象を洗浄できるため、機械部品や工具、半導体部の洗浄、メッキ前の脱脂洗浄などさまざまなシーンで超音波洗浄が行われます。

ただしキャビテーションが材質を侵食する恐れもあるため、出力や処理時間を試験片で確認してから行うのが一般的です。特に、アルミや銀などの柔らかい素材や、半導体のウェーハなどの繊細な素材は傷がつくケースもあります。

また、多くの細い穴が多方向に開いた物体などの、超音波が伝達しづらい素材は洗浄の難易度が上がります。

 

2-2. スプレー(シャワー)洗浄

スプレー洗浄は、ポンプで加圧した洗浄液をノズルから高速噴射し、噴流の力で汚れを吹き飛ばす方法です。洗浄後はリンス水で噴霧成分を洗い流し、熱風やブロアで速やかに乾燥させる工程を挟んで仕上げます。

部品を液に沈めないため落とした汚れが再付着しにくく、きわめて細かな溝にも届きやすい点がメリットです。ただし、洗浄する物品の形に合った形状に合ったノズル配置が必須で、配置が甘いと洗浄ムラが生じるリスクがあります。

そのため、電子基板や細かな溝の付いた機械部品、複雑な医療機器など、入り組んだ形状で汚れの再付着を避けたいものを洗浄するのに向きます。

 

2-3. 酸洗浄

酸洗浄は、硫酸や塩酸などの酸を使って、金属表面の酸化皮膜や錆を溶解除去する洗浄方法です。洗浄槽に浸ける「浸漬洗浄」、ポンプで循環する溶液に漬ける「循環洗浄」、ブラシやノズルで吹き付ける「塗布洗浄」の3つの方法があります。酸洗浄の処理後は中和水洗と防錆剤処理を行い、素地の溶解を防ぐのが鉄則です。

酸洗浄は複雑な形状の素材でも、短時間で金属表面の被膜や錆を除去できる一方で、処理を誤ると素地が溶けて破損・変形するリスクがあります。

そのため、メッキや研磨の前処理として行われるのが普通です。

 

2-4. パイロジェンフリー洗浄

パイロジェンフリー洗浄(エンドトキシンフリー洗浄)は、グラム陰性菌由来の発熱物質であるエンドトキシン(パイロジェン)を除去した超純水を使った洗浄方法です。滅菌では分解できないエンドトキシンを製造段階で持ち込まないため、細胞培養容器や注射剤バイアルに安心して使用可能です。

特に細胞培養分野では、培養に使用する実験器具を清浄に保つ必要があります。パイロジェンフリー洗浄を行った場合、残留エンドトキシン濃度は洗浄前の10,000分の1程度にまで減少するという結果が出ており、培養容器や器具の洗浄には最適な方法と言えます。

再生医療産業におけるパイロジェンフリー洗浄の可能性

 

3. クリーン洗浄に使われるクリーンルームとは

クリーン洗浄においては、洗浄の品質を安定させるために「クリーンルーム」と呼ばれる空間が不可欠です。クリーンルームとは、空気中の浮遊微粒子や微生物を一定基準以下に保つよう管理された部屋で、製品に異物や汚染物が付着するのを防ぐ目的で使用されます。

空気中に含まれる微粒子は、肉眼で見える大きさの100分の1以下であり、一般的な空調設備のフィルターでは完全に除去することができません。そのため、クリーンルームでは高性能なHEPAフィルターやULPAフィルターを使用して空気を清浄化するとともに、圧力や気流、温湿度、静電気、振動などの環境条件を細かく制御しています。

さらに、外部からの汚染物の持ち込みを防ぐため、入室前にはエアシャワーで塵埃を取り除き、使用機材や備品もすべて洗浄されたものを使用します。

 

3-1. クリーンルームのクラス

クリーンルームの性能は「クラス」という基準で評価されます。これは1立方メートルあたりの空気中に含まれる微粒子の数をもとに清浄度を示すもので、数値が小さいほど清浄度が高い環境です。クラスの規格には、以前は米国連邦規格(FTD規格)が主に使用されていましたが、現在ではISO規格(ISO 14644-1)が国際的に採用されています。

ISO規格では、クリーンルームはクラス1からクラス9までの9段階に分かれています。ISOクラス1は0.1μm以上の粒子が1立方メートル中に10個以下という、非常に高い清浄度を持つクリーンルームです。

ISOクラスFTDクラス粒径
0.1μm0.2μm0.3μm0.5μm1.0μm5.0μm
クラス1102
クラス210024104
クラス3クラス11,000237102358
クラス4クラス1010,0002370102035283
クラス5クラス100100,00023,70010,2003,52083229
クラス6クラス1,0001,000,000237,000102,00035,2008,320293
クラス7クラス10,000352,00083,2002,930
クラス8クラス100,0003,520,000832,00029,300
クラス935,200,0008,320,000293,000

清浄度の違いによって、クリーンルームの設置・運用コストにも差が生じるため、製造する製品や工程に適したクラスを選定することが重要です。通常、医療機器の製造分野では、ISOクラス6~8(FTDクラス1,000~100,000)のクリーンルームが使われます。

 

4. クリーン洗浄の工程

クリーン洗浄の工程は、どのような洗浄方法を使うかによって変わります。以下では、サンプラテックが行っているパイロジェンフリー洗浄の洗浄工程例を紹介します。

1ISOクラス6(クラス1,000)のクリーンルーム内で超純水を用いてエンドトキシンとパーティクルを除去します。 ※繊維類(無塵服)、容器、無菌コネクタ、チューブ、継手など様々な形状・用途の製品に対応可能です。また、アセンブリ作業、各種滅菌対応も可能です。
2ISOクラス6(クラス1,000)のクリーンルーム内で超純水を用いて最終洗浄を行います。
3洗浄後はクリーンルームでの自然乾燥、または、クリーンオーブン乾燥を実施します。乾燥後は、残留するエンドトキシン量をトキシノメーターを用いて比濁法で測定して判断します。洗浄方法と同じくお客様の御要望に合わせた評価方法をご提案可能です。
4ISOクラス6(クラス1,000)のクリーンルーム内で2重クリーンパック包装を行います。

 

まとめ

クリーン洗浄は、一般的な洗浄とは異なり、わずかな粒子や化学物質、微生物が製品の性能や安全性に影響を及ぼす場面で活用される専門的な技術です。超音波やスプレー、酸、パイロジェンフリー水を使う方法などがあり、対象物の用途や素材に応じて最適な方法が選ばれます。

また、クリーン洗浄の品質はクリーンルームの性能にも大きく左右され、ISO規格に基づくクラス選定や、気流・温湿度などの環境制御が欠かせません。特にパイロジェンフリー洗浄は、医療や再生医療分野での要求に応える高度な手法として注目されています。

サンプラテックでは、容器の二次加工品としてクリーン洗浄したボトルをご用意しております。

クリーンルームでの使用に適した純水洗浄済みのクリーンパックをはじめ、酸洗浄やパイロジェン洗浄など、用途に応じた洗浄仕様をお選びいただけます。

詳しくは[クリーン洗浄ページ]をご覧ください

また、規格品だけでなく、お客様のご要望に応じた特注洗浄対応も承っております。弊社容器へのクリーン洗浄加工をご検討の際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。