ポリエチレンとは?耐熱性・耐薬品性や代表的なPE製容器を紹介
汎用樹脂の一種であるポリエチレンは、ゴミ袋・包装材・パイプといった身近な樹脂製品に使用される物質です。理化学分野においても保管容器やキャップなど、ポリエチレンはさまざまな用途で使用されています。
理化学分野でポリエチレン製容器を使用するときは、ポリエチレン製容器の耐熱性・耐薬品性を理解することが重要です。今回はポリエチレンの基礎知識をはじめ、ポリエチレン製容器の耐熱性・耐薬品性、代表的なポリエチレン容器までを紹介します。
1.ポリエチレンとは?
ポリエチレンとは、エチレンを重合させることで作られる熱可塑性樹脂のことです。ポリエチレンは略称の「PE」で呼ばれることも多く、化学式はエチレン(C2H4)の重合で示されます。
●ポリエチレンの化学式
(C2H4)n
ポリエチレンは安価で大量生産がしやすく、製法を変えることで密度や性質が異なる物質を簡単に作り出すことが可能です。ここでは、ポリエチレンの特徴と主な用途を紹介します。
1-1.ポリエチレンの特徴
ポリエチレンは、大きく分けて低密度ポリエチレン(LDPE)と高密度ポリエチレン(HDPE)の2種類が存在します。ポリエチレンの特徴を5つのカテゴリーに分けて、低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンの違いも交えつつ解説するため、ぜひ参考にしてください。
物理的性質 |
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ポリエチレンは透明~不透明の色味を持ちます。比重(単位:グラム毎立方センチメートル)は低密度ポリエチレンが0.91~0.92、高密度ポリエチレンが0.94~0.965です。塩化ビニール樹脂の1.30~1.58やABS樹脂の1.01~1.04と比較して、ポリエチレンは比重が軽い物質と言えます。 |
機械的性質 |
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低密度ポリエチレンは樹脂の中でもやわらかく、伸びやすい性質を持ちます。一方で、高密度ポリエチレンは衝撃への強さや硬さが高く、高い剛性も持つ物質です。 |
熱的性質 |
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ポリエチレンの耐熱温度(単位:℃)は、低密度ポリエチレンが82~100、高密度ポリエチレンが121です。塩化ビニール樹脂は66~79、ABS樹脂は71~99であり、ポリエチレンは樹脂の中では比較的耐熱性があります。 |
電気的性質 |
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ポリエチレンは非極性の物質であり、絶縁体としての電気的性質に優れています。1MHzの比誘電率(単位:εγ)では、低密度ポリエチレンは2.25~2.35、高密度ポリエチレンは2.30~2.35です。塩化ビニール樹脂の2.8~3.1、ABS樹脂の2.4~3.8と比較して、ポリエチレンは比誘電率が小さく、高周波領域での絶縁体として使用できます。 |
化学的性質 |
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ポリエチレンの化学的性質では、吸水性の低さが大きな特徴です。低密度ポリエチレン・高密度ポリエチレンのどちらも水をほとんど通さず、防水性・耐水性が求められる用途に適しています。 |
1-2.ポリエチレンの主な用途
ポリエチレンの主な用途を、低密度ポリエチレン(LDPE)と高密度ポリエチレン(HDPE)に分けて紹介します。
●低密度ポリエチレン
- 透明容器
- 食品包装用フィルム
- ラップ
- 電線被覆材料
- 透明なポリ袋
低密度ポリエチレンは、やわらかく伸びやすい性質を活かした用途に使用されています。透明性を高い状態で作ることもでき、フィルム・ラップに適した素材です。
●高密度ポリエチレン
- 保管容器
- ブロー成形品
- 食品用容器
- 水道用パイプ
- ポリタンク
- 白色のポリ袋
高い強度と剛性を持つ高密度ポリエチレンは、保管容器やパイプなどの頑丈さが求められる用途に適しています。
2.ポリエチレン製容器の耐熱性・耐薬品性
ポリエチレンを原材料とするポリエチレン製容器は、ウォータータンク・食用油用のボトル・化粧品のボトルなど、数多くの製品で使用されています。ポリエチレン製容器は幅広い産業で使用される汎用性の高い容器です。
ポリエチレン製容器の性質は、基本的に原材料のポリエチレンに準じています。しかし、容器としての耐熱性・耐薬品性は、ポリエチレンと同じであるとは限りません。
ここでは、ポリエチレン製容器の耐熱性・耐薬品性について解説します。
耐熱性 |
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ポリエチレンの耐熱温度は、低密度ポリエチレンであっても82~100℃とされています。しかし、ポリエチレン製容器の耐熱温度は約80℃です。80℃を超える物質を入れることはもちろん、高温環境下で滅菌処理を行うオートクレーブも使用できません。 |
耐薬品性 |
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3.理化学分野で使用する主なポリエチレン製容器6つ
理化学分野で使用する樹脂製容器の中でも、最もメジャーな製品がポリエチレン製容器です。ポリエチレン製容器は安価でサイズ展開も豊富にあり、幅広い産業で使用されています。近年は、地球環境に配慮したバイオポリエチレン製容器も登場し、SDGsやCSR活動の一環として導入する企業が増加しています。
下記では、理化学分野で使用する主なポリエチレン製容器を6つ紹介します。
PE広口瓶 |
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PE広口瓶は容器の口径が広く、薬品の出し入れがしやすいスタンダードな製品です。コストが安価で耐薬品性に優れており、化学薬品や電子材料、中間材料、サンプリングの保存など、幅広い用途に使用できます。 |
サンプラ(R) バイオプラ PE広口ボトル |
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サンプラ(R) バイオプラ PE広口ボトルは、植物由来の樹脂から作られた製品です。植物由来であってもエチレンからポリエチレンを製造する流れは同じであり、一般的なポリエチレン製容器と同様の性能を持ちながら、CO2排出量を最大80%削減することができます。 |
PE広口遮光瓶 |
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PE広口遮光瓶は、およそ220nm~800nmの波長を持つ光を、ほとんど遮光してくれる製品です。次亜塩素酸水などの日光で変質しやすい薬品を保管する用途に適しています。 |
EOG滅菌瓶(PE広口) |
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EOG滅菌瓶(PE広口)は、酸化エチレンガスで滅菌処理済みのポリエチレン製容器です。容器本体はフタ・中栓を外した状態で個装パックされており、開封してすぐに水質検査の採水瓶として使用できます。 |
サンプラ(R)容器 |
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サンプラ(R)容器は、容器内面に凹凸が少ない寸胴形状のポリエチレン製容器です。寸胴形状の容器は中身を出し入れしやすく、粉体や粘度が高い物質の保管・移動に適しています。 |
ポリディスカップ |
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ポリディスカップは、やわらかいポリエチレンで作られたディスポーザブルカップです。塗料や薬品の調合・試験に適しており、容器を握るだけで簡単に注ぎ口が作れます。 |
上記以外にも、ポリエチレン製容器は多数の製品が存在します。ポリエチレン製容器の中から、用途に合った仕様・サイズの製品を探してみてください。
まとめ
ポリエチレンはエチレンの重合によって作られる樹脂の一種で、比重の軽さ・絶縁性の高さ・吸水性の低さが主な特徴です。ポリエチレン製容器の耐熱温度は約80℃であり、無機酸や無機アルカリを中心に多くの耐薬品性を持ちます。
サンプラテックのIREMONOサイトでは、樹脂や理化学分野で使用する容器についての情報を多数紹介しております。ポリエチレン製容器の種類や特徴・用途を知りたいときは、下記のページをご利用ください。