オートクレーブとは?代表的な滅菌方法・プラスチック別の滅菌可否も
研究・開発・製造の分野では、実務上滅菌した容器が必要となることが多くあります。高圧蒸気を活用したオートクレーブは、短時間で確度の高い滅菌が行えることから、研究・開発・製造の分野でも頻繁に実施されている滅菌方法です。
今回は、オートクレーブの概要・メリット・デメリットから、プラスチック容器をオートクレーブする方法、オートクレーブを行う際の注意点までを解説します。オートクレーブに関する理解を深め、研究やモノづくりに役立てたい方は、ぜひ参考にしてください。
1.オートクレーブとは?
オートクレーブとは、「高圧の蒸気を用いて、器具や容器に付着した微生物のタンパク質を変容させる滅菌方法・滅菌機器」のことを言います。オートクレーブによる滅菌は、「高圧蒸気滅菌」と呼ばれることがあります。
オートクレーブは滅菌力が高く、121℃で約20分という短い時間で滅菌できることが特徴です。また、蒸気を活用した滅菌方法であるため、高温高圧に耐えうる器具や容器であれば、ガラス・金属・ゴム・プラスチック・繊維など、幅広い対象を滅菌できます。
1-1.オートクレーブのメリット・デメリット
オートクレーブのメリット・デメリットは、以下の通りです。
オートクレーブのメリット
- 高圧蒸気を用いるため、適用範囲が幅広く滅菌力が高い
- 乾熱滅菌よりも短い時間で滅菌できる
- 浸透性が高く残留毒性がないため、滅菌方法として扱いやすい
オートクレーブのデメリット
- 湿度・温度・耐圧などに制限がある器具や容器には使用できない
- プラスチック素材の場合は、素材によってオートクレーブの可否が異なる
オートクレーブは、滅菌方法として信頼度が高く、コストパフォーマンスにも優れています。滅菌可能な素材や滅菌の手順について留意した上で、利用しましょう。
1-2.オートクレーブ以外の代表的な滅菌方法
滅菌方法には、オートクレーブ以外にもいくつかの方法があり、オートクレーブによる滅菌が行えない場合に役立てることができます。
以下に、オートクレーブ以外の各種滅菌方法を解説します。
乾熱滅菌 | 乾燥した空気を加熱させて、微生物を滅菌する方法です。
電源のみで安価に行えて、残留毒性がないことがメリットです。一方で、高温に耐えうる器具にしか適用できず、滅菌に時間がかかることがデメリットとなります。 |
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EOG滅菌 | 酸化エチレンガスにより、微生物のタンパク質に変容を起こして滅菌する方法です。
低温滅菌であるため、加熱に弱い容器でも滅菌できます。一方で、滅菌時間が長く、コストがかかる点に注意が必要です。また、残留ガスの毒性が強いため、滅菌後にガスを除去する手間が必要となります。 |
EB滅菌 | 電子線を照射して微生物を死滅させる滅菌方法です。
瞬時かつ高強度の滅菌が可能であり、滅菌後の残留毒性もありません。一方で、放射線で劣化する素材には使用できない点がデメリットです。 |
過酸化水素ガス低温滅菌 | 過酸化水素の蒸気を利用して、微生物を滅菌する方法です。
低温滅菌であるため、材質適合性がよい点がメリットと言えます。また、滅菌操作やモニタリングも容易に行えます。一方で、過酸化水素を吸着する紙製品・脱脂綿・リネン・綿布などは、滅菌できません。 |
滅菌の定義は「滅菌は無菌性を達成するためのプロセス」
と言われています。
出典:Y’s Square 吉田製薬株式会社「II 滅菌法・消毒法概説」
滅菌方法には他にも、ろ過法・火炎法など多岐にわたるため、興味がある方は調べてみてください。
2.プラスチック容器をオートクレーブする方法
プラスチック容器をオートクレーブで滅菌するためには、一定の手順を守ることが重要です。手順を守らないと、容器が破損したり、滅菌が不十分となったりする恐れがあります。
プラスチック容器をオートクレーブする手順について、以下に解説します。
●プラスチック容器をオートクレーブで滅菌する手順
(1)プラスチック容器を洗浄する
プラスチック容器に残留物質が残ったままオートクレーブ滅菌を行うと、焼き付けを起こし、材質表面が変質する恐れがあります。まずは、やわらかいスポンジなどを使用し中性洗剤で容器を丁寧に洗浄しましょう。
洗浄後は、蒸留水を使用して中性洗剤を完全にすすぎ、プラスチック容器を乾燥させます。
(2)オートクレーブにプラスチック容器をセットする
オートクレーブの機器の底にスノコが浸る程度の水道水を入れて、その上に滅菌するプラスチック容器をカゴに入れてセットします。プラスチック容器の蓋やキャップを付けたままだと、加熱した際の圧力差で容器が破損する恐れがあるため、必ず取り外してください。
機器の蓋をしてハンドルを締めたら、安全弁を確認して排気コックを閉じます。
(3)オートクレーブを加熱して滅菌処理を行う
不備がないか再度確認した後、タイマーをセットして機器を加熱します。徐々に内圧が上昇するため、蒸気漏れや安全弁の外れなどの異常がないかを確認しましょう。
設定時間を過ぎると徐々に内圧と温度が低下します。
(4)温度が低下したらプラスチック容器を取り出す
100℃前後までオートクレーブの温度が低下すると、排気弁が開きます。内圧が通常に戻り、温度が100℃以下まで下がったら、オートクレーブの蓋を開けましょう。
プラスチック容器を十分に冷まして、手で持てる程度の温度となってから取り出します。
また、オートクレーブは基本的に121℃・20分間・103.4kPaの条件下で行うことがおすすめです。
2-1.【プラスチック別】オートクレーブの可否
すべてのプラスチック樹脂で、オートクレーブが行えるわけではありません。
以下の表を確認して、プラスチック樹脂別のオートクレーブの可否を確認しましょう。
オートクレーブ可能なプラスチック素材(※1) |
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※1:121℃・103.4kPa(15psig)の条件下で繰り返し滅菌可能である素材 |
オートクレーブに適さないプラスチック素材(※2) |
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※2:オートクレーブ滅菌ができなくはないが、強度が低下しやすい素材 |
オートクレーブ不可であるプラスチック素材(※3) |
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※3:高温・高圧で劣化や破損に繋がるため、オートクレーブ滅菌ができない素材 |
ポリプロピレンとポリエチレンは、どちらもトップクラスの生産量を誇る汎用樹脂であり、名称や用途も類似しています。しかし、ポリプロピレンはオートクレーブ可能ですが、ポリエチレンはオートクレーブ不可である点に注意が必要です。
オートクレーブによる滅菌を想定している場合は、ポリプロピレン製のプラスチック容器やフッ素樹脂製の容器を選びましょう。
3.オートクレーブを行う際の注意点
オートクレーブを行う際は、以下の注意点に気を付けましょう。
缶体を飽和水蒸気で満たす |
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オートクレーブで滅菌する際は、「湿度」「温度」「時間」の条件を整えることが重要です。この3つの条件が揃わないと、滅菌効果が低下します。
缶体内部を飽和水蒸気で100%満たすことで、適切な湿度と温度を確保できます。缶体内部に空気が残っていると湿度を保てないため、加熱の過程で空気を抜かなくてはなりません。 オートクレーブを行うにあたって、一般的に温度と時間は十分な確認が行われますが、湿度の確認は疎かになりやすいため、注意しましょう。 |
滅菌の遅れ時間について |
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被滅菌物によっては、滅菌の遅れ時間が発生する場合があります。オートクレーブのパネルに表示されている温度は缶体内の雰囲気温度(流体温度)であり、被滅菌物の実際の温度は遅れてパネルに表示されるためです。
また、液体・廃棄物処理など、被滅菌物の量・入れ方などによって遅れ時間が異なります。よって、オートクレーブを行う際は、遅れ時間を踏まえた時間設定を行うことが重要です。 |
また、缶体内に被滅菌物を直接入れることは避けましょう。制御センサーや温度センサーがふさがれ、本体の故障・事故の原因となります。
4.プラスチック容器のオートクレーブは「耐熱温度121度以上」がポイント
オートクレーブで十分な滅菌効果を発揮するためには、121℃以上まで加熱する必要があります。よって、オートクレーブ滅菌を想定したプラスチック容器を選ぶ際は、121℃以上の耐熱温度を有する素材を用いることが前提となります。
プラスチック容器における、素材別の常用耐熱温度を詳しく知りたい方は、こちらの記事をご参考ください。
オートクレーブでの滅菌が可能なプラスチック容器をお探しの方は、サンプラテックのPPボトルやフッ素樹脂製のボトルがおすすめです。どちらもオートクレーブの条件である耐熱温度121℃以上を満たしていることはもちろん、PPボトルは中栓不要なインナーキャップ仕様で作業効率性にも優れているため、ぜひご検討ください。
まとめ
オートクレーブは汎用性が高く短時間で高い滅菌力があることから、滅菌方法のスタンダードとも呼べる方法です。
研究・開発・製造に用いる器具や容器を滅菌する方法は複数ありますが、オートクレーブが活用される機会は少なくありません。そのため、研究やモノづくりに携わる方は、オートクレーブに関する理解を深めることをおすすめします。
オートクレーブで滅菌を行う際には、高温高圧に耐えうる容器を使用することや、缶体の湿度・滅菌の遅れ時間に注意することが重要です。
サンプラテックでは、PPボトルなどのオートクレーブに適したプラスチック容器を取り扱っています。オートクレーブ用の容器お探しの方は、ぜひご活用ください。