容器の気密性とは?密閉や密封との違い・主な漏れ試験の種類も
理化学実験や医薬品製造・開発の現場では、試料や薬品類を保存するさまざまな容器が使用されています。容器を選ぶ際に重要なポイントが、容器の気密性です。気密性に優れた容器は保存性も高く、医薬品を適切に保存することができます。
また、理化学分野で使用される容器には、気密容器の他に密閉容器や密封容器も存在します。気密と密閉・密封にはどのような違いがあるのでしょうか。今回は容器の定義から、密閉・気密・密封の違い、主な漏れ試験の種類と内容までを解説します。
1.容器の定義とは?
理化学分野における容器とは、医薬品を適切に保存できる入れ物のことです。厚生労働省が定めた医薬品の規格基準書である「日本薬局方」では、容器の定義を下記の通りに定めています。
通則42
容器とは、医薬品を入れるもので、栓、蓋なども容器の一部である。容器は内容医薬品に規定された性状及び品質に対して影響を与える物理的、化学的作用を及ぼさない。
気密容器に求められる性能としては、運搬・保存時に「液が漏れないこと」が重要です。次項では、日本薬局方で定めている「密閉容器」「気密容器」「密封容器」の3種類について、各容器の違いを解説します。
1-1.密閉容器・気密容器・密封容器の違い
密閉容器・気密容器・密封容器は、日本薬局方において以下のように定義されています。
●密閉容器
密閉容器は、内容医薬品の損失を防ぎ、固体の異物が侵入することを防ぐ容器です。医薬品を個装している紙箱や、輸液製剤のダンボール箱などが密閉容器に該当します。
通則43
密閉容器とは、通常の取扱い、運搬又は保存状態において、固形の異物が混入することを防ぎ、内容医薬品の損失を防ぐことができる容器をいう。密閉容器の規定がある場合には、気密容器を用いることができる。
●気密容器
気密容器は、密閉容器の性能に加えて、内容医薬品の風解・潮解・蒸発を防ぎ、液体の異物が侵入することも防ぐ容器です。ガラス瓶・缶や樹脂製容器、医薬品包装であるSP包装・PTP包装などは気密容器に該当します。
通則44
気密容器とは、通常の取扱い、運搬又は保存状態において、固形又は液状の異物が侵入せず、内容医薬品の損失、風解、潮解又は蒸発を防ぐことができる容器をいう。気密容器の規定がある場合には、密封容器を用いることができる。
●密封容器
密封容器は、気密容器の性能に加えて、気体の侵入も防ぐ容器です。ガラス製のアンプル瓶やバイアル瓶が密封容器に該当します。
通則45
密封容器とは、通常の取扱い、運搬又は保存状態において、気体の侵入しない容器をいう。
上記をまとめると、密閉容器・気密容器・密封容器の違いは、大まかに以下の通りとなります。
密閉容器 | ||
---|---|---|
防ぐことができる異物の状態 | 固体 | ○ |
液体 | × | |
気体 | × |
気密容器 | ||
---|---|---|
防ぐことができる異物の状態 | 固体 | ○ |
液体 | ○ | |
気体 | × |
密封容器 | ||
---|---|---|
防ぐことができる異物の状態 | 固体 | ○ |
液体 | ○ | |
気体 | ○ |
2.漏れ試験の主な種類
一般的に容器の気密性は、漏れ試験を行い調査します。漏れ試験とは、液体・気体など、流動性がある物質を利用して、試験体である容器に漏れが生じないかを検査する方法です。
JISでは、一般的な漏れ試験の方法について、種類と選択方法の指針が規定されています。
参考:日本工業規格 JIS「非破壊試験−漏れ試験方法の種類及びその選択」
以下では、JISが示す「液体」「気体」「サーチガス」を利用した各漏れ試験について、具体的な試験内容と特徴を解説します。
2-1.液体を用いた漏れ試験
液体を用いた漏れ試験は、漏れた液体の移動を現像剤や添加剤などを利用して可視化し、観察する試験法です。
液体を用いた漏れ試験の基本的な方法は容器に液体を満たす、もしくは液体を塗布することであり、漏れの確認が容易な点がメリットです。一方で、漏れ試験を行ったあとは液体を洗浄する手間がかかり、極度に小さな漏れは発見できない恐れがあるなどのデメリットがあります。
JISで示されている液体を用いた漏れ試験の種類は、下記の3つです。
・蛍光染料を添加した漏れ試験 |
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蛍光染料を添加した漏れ試験は、蛍光染料を添加した液体で容器内を満たし、ブラックライトなどで紫外線を照射する方法です。 容器に漏れがあると、蛍光染料を添加した液体が漏れの箇所に沿って染み出します。蛍光染料は紫外線に反応して光るため、蛍光の指示模様を観察することで漏れを確認可能です。 |
・現像剤を使用した漏れ試験 |
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現像剤を使用した漏れ試験は、容器内を液体で満たし、容器外面に液体と反応して発色する現像剤を塗布する方法です。 現像剤を塗布した箇所に漏れがあると、液体が漏れの箇所に沿って染み出し、現像剤が液体と反応して発色します。なお現像剤の種類には、白色現像剤・発色現像剤・蛍光現像剤などがあり、それぞれ指示模様が異なる点が特徴です。例えば発色現像剤の場合は、白色光下で指示模様は赤を示します。 |
・浸透液を使用した漏れ試験 |
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浸透液を使用した漏れ試験は、容器内面に浸透液を塗布し、容器外面には浸透液と反応して発色する現像剤を塗布する方法です。 浸透液を塗布した箇所に漏れがあると、浸透液は毛細管現象によって外面方向に染み出し、塗布した現像剤が浸透液と反応して発色します。なお利用する浸透液も、JISによって定められています(JIS Z 2343-1) |
2-2.気体を使用する漏れ試験
気体を使用する漏れ試験は、定性的な試験・定量的な試験の2つがあり、JISでは5つの試験方法が示されています。
また、気体の注入や測定には専用設備が必要であり、漏れの見逃しを防ぐために適切な運用を心掛けることが大切です。
・液没試験 |
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液没試験は、容器内を気体で加圧して、液体中に浸漬させる方法です。 容器から出る気泡を観察することで漏れを調べる、定性的な試験となります。液体に水を使用する方法は「水没試験」と呼ばれ、試験体に水が使用できない場合は、有機溶剤を使用することが一般的です。 |
・発泡漏れ試験 |
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発泡漏れ試験は、容器内を気体で加圧して、容器外面に発泡液を塗布する方法です。 発泡液の泡立ちを観察することで漏れを調べられます。容器を加圧できない場合は、真空箱を使用する真空法で試験を行います。 |
・圧力変化による漏れ試験 |
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圧力変化による漏れ試験は、容器内を気体で加圧もしくは減圧して、時間経過による圧力変化を圧力計で測定する方法です。 圧力変化による漏れ試験には「密封チャンバー法」「真空度低下法」などの種類があります。 |
・流量測定による漏れ試験 |
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流量測定による漏れ試験は、内部を気体で加圧した容器と加圧装置を繋ぎ、間に設置した流量計で気体の流量を調べる方法です。 容器に漏れがあると、加圧装置が気体を充填するため、流量計の数値が変化します。容器の漏えい量を計測できるため、許容漏えい率が設定されている際に適した検査方法です。 |
・超音波漏れ試験 |
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超音波漏れ試験は、内部を気体で加圧した容器と加圧装置を繋ぎ、超音波検知器で超音波の有無を測定する方法です。 容器の漏れがある箇所では、気体が出てくる時に超音波が発生します。漏れの箇所に近いほど超音波は強くなるため、超音波検知器を動かすことで漏れの箇所を正確に特定可能です。 |
2-3.サーチガスを用いた漏れ試験
サーチガスを用いた漏れ試験は、特定のガスを高感度で検出できる分析装置などによって容器の漏れを調べる方法です。
JISは、サーチガスとして用いるガスの種類として、ヘリウムガス・水素ガス・ハロゲンガス・アンモニアガスの4つを示しています。ガスの種類によって、実施する漏れ試験の方法も下記の通りに異なります。
- ヘリウム漏れ試験
- 水素漏れ試験
- ハロゲン漏れ試験
- アンモニア漏れ試験
また、サーチガスを用いた漏れ試験では、試験の目的によって適用方法にも違いが存在します。主な適用方法は、下記の3種類です。
・真空法 |
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真空法は、容器内を真空にして、容器の外側でサーチガスと接触させる方法です。 容器に漏れがあると、漏れの箇所からサーチガスが侵入して分析装置に検出されます。また、真空法には「真空外覆法」「真空吹付け法」の2種類が存在します。 |
・加圧法 |
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加圧法は、容器内にサーチガスを封入して、容器の外側に流出するサーチガスを分析装置で検出する方法です。 なおJISでは、加圧法の具体的な種類として「吸込み法」「吸盤法」「真空容器法」「加圧積分法」の4種類を定義しています。 |
・ボンビング法 |
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ボンビング法は、サーチガスで加圧されたチャンバー内に容器を入れて、容器にサーチガスを浸み込ませる方法です。 容器の外側を排気したあとに、容器から流出するサーチガスを分析装置で検出します。内部を真空にできない、あるいはサーチガスを封入できないような構造の容器では、ボンビング法が有効です。 |
まとめ
容器とは、医薬品を適切に保存できる入れ物を指し、密閉容器・気密容器・密封容器の3つが存在します。日本薬局方で定義されている3つの容器について理解し、使用目的に合った容器を選択しましょう。
漏れ試験は大きく分けて液体・気体・サーチガスの3種類があり、試験内容はさらに細分化されています。気密性に優れた容器を購入したい際は、漏れ試験実施済みの容器を購入しましょう。
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