2025.5.30 IREMONOニュース

清浄度とは?クリーンルームのクラスや四原則を分かりやすく解説

清浄度とは?クリーンルームのクラスや四原則を分かりやすく解説

製造現場では異物混入や品質トラブルを最小限に抑えるため、「クリーンルーム」と呼ばれる、空気中に含まれる微粒子の数に一定の制限を設けた部屋で作業を行います。クリーンルームの清浄さは用途によって異なり、現場内でも作業の内容に応じて細かく管理されているのが特徴です。

当記事では、クリーンルームの清浄度を数値で示す規格や、それぞれの用途に応じた求められる清浄度の違い、清浄度を保つ4原則などを解説します。クリーン環境の基礎を知りたい方はぜひご覧ください。

 

1. クリーンルームの清浄度とは

クリーンルームの清浄度とは、空気中の微粒子や浮遊微生物の量に基づいて空間の清浄さを数値で示す指標です。製品の品質を保つため、半導体や医薬品などの製造現場で厳密に管理されます。規格としては、ISO14644-1や旧米国連邦規格(Fed.Std.209E)などがあり、用途に応じた清浄度の維持が求められます。

以下では、クリーンルームの清浄度を定める代表的な規格やその違いについて解説します。

 

1-1. ISO14644-1

ISO14644-1は、クリーンルーム内の微粒子濃度に基づいて清浄度を9段階で分類する国際規格です。1立方メートルあたりに含まれる0.1μm以上の粒子数を基準とし、クラスの数値が小さいほど清浄度が高くなります。

たとえば、クラス7では0.5μm粒子が351,676個以下、クラス6では35,168個以下と定められています。現在、世界的にこのISO規格が清浄度管理の標準となっており、日本のJIS B9920も同様の基準に基づいています。

クラス/粒径0.1μm0.2μm0.3μm0.5μm1.0μm5.0μm
クラス1102
クラス210024104
クラス31,000237102358
クラス410,0002,3701,02035283
クラス5100,00023,70010,2003,52083229
クラス61,000,000237,000102,00035,2008,320293
クラス7352,00083,2002,930
クラス83,520,000832,00029,300
クラス935,200,0008,320,000293,000

 

1-2. アメリカ連邦規格Fed.Std.209D

アメリカ連邦規格Fed.Std.209Dは、1立方フィート(約28.3L)中に含まれる0.5μm以上の粒子数に基づき、クラス1~100,000に分類します。粒子数がそのままクラス名となる分かりやすさから、ISO制定以前は国内外で広く使用されていました。現在は国際的な統一を図るためISO14644-1が主流ですが、FED規格は今も一部現場で使われています。

クラス/粒径0.1μm0.2μm0.3μm0.5μm5μm
クラス1357.531
クラス10350753010
クラス100750300100
クラス1,0001,0007
クラス10,00010,00070
クラス100,000100,000700

 

2. クリーンルームの用途別に求められる清浄度の違い

クリーンルームに求められる清浄度は、使用目的によって大きく異なります。たとえば、半導体や精密機器の製造に使われる「インダストリアルクリーンルーム」と、医薬品や食品の製造に用いられる「バイオロジカルクリーンルーム」では、異物の種類や管理基準が異なります。

以下では、それぞれの用途に応じた清浄度の違いについて解説します。

 

2-1. インダストリアルクリーンルーム

インダストリアルクリーンルーム(ICR)は、半導体、電子機器、精密機械、自動車部品などの工業製品の製造において、空気中の微粒子を極限まで除去するために設けられた管理空間です。対象となる主な汚染物質は、塵埃や金属くずなどの微粒子であり、製品への付着による不良を防ぐため、工程ごとに厳格な清浄度が求められます。

インダストリアルクリーンルームの用途と求められる清浄度の目安は以下の通りです。

用途主な対象工程目安となる清浄度クラス(Fed.Std.209)
半導体製造(基板工程)ウェーハ製造、露光、エッチング、蒸着などクラス10~10
半導体製造(組立工程)組立、テストクラス1,000~100,000
光学機器レンズ加工、蒸着、組立、品質検査クラス100~10,000
電子部品プリント基板、コンデンサ製造、組立、検査クラス100~10,000
精密機械加工、組立、検査、梱包クラス100~100,000
自動車部品電装品製造、組立、検査、塗装クラス1,000~100,000
印刷関連前洗浄、塗装印刷、品質管理クラス1,000~100,000

 

2-2. バイオロジカルクリーンルーム

バイオロジカルクリーンルーム(BCR)は、食品や医薬品の製造、再生医療など、衛生管理が厳しく求められる分野で活用されるクリーンルームです。空気中の微粒子に加え、細菌やウイルスなどの微生物の混入も防止する必要があり、無菌環境の維持が不可欠です。製品の安全性や有効性を確保するため、用途に応じた高い清浄度が求められます。

以下に、主な用途別に求められる清浄度の目安を示します。

用途主な対象工程目安となる清浄度クラス(Fed.Std.209)
食品(きのこ栽培)培地冷却、種菌接種クラス100~100,000
食品(加工・梱包)加工、冷却、梱包クラス1,000~100,000
医薬品研究、開発、製造、無菌室作業クラス100~100,000

また、再生医療などで利用されるクリーンルームは、ISO14644-1に基づいて設計されることが多く、以下のような清浄度が求められます。

用途ISOクラス基準粒子数(0.5μm)/m³使用例
最終製品の無菌充填などISOクラス5≦3,520滅菌作業、最終製品の無菌充填
細胞培養、中間製品の処理ISOクラス6≦35,200細胞の培養、中間生成物の処理
培養準備、細胞組み立てISOクラス7≦352,000組織の培養準備、組み立て工程
更衣室、サポートエリアISOクラス8≦3,520,000出入り口、資料保存室、着脱衣室などサポート区域

 

3. クリーンルームの清浄度を保つ4原則

クリーンルームで製品の品質や安全性を維持するために重要なのが「清浄度を保つ4原則」です。清浄度を保つ4原則は「持ち込まない」「発生させない」「堆積させない」「除去する」という行動原則に基づいており、それぞれに具体的な管理策が求められます。

原則内容具体的な対策例
持ち込まないゴミやゴミの発生源となるものを持ち込まない
  • 防塵衣を正しく着用する
  • エアシャワーを浴びる
  • 機械・材料はクリーニングして持ち込む
  • 私物は持ち込まない
  • 喫煙後はうがいをする
発生させないゴミを発生させる行為をしない
  • 無駄な動きをしない
  • 防塵衣を正しく着用する
  • 防塵紙であっても丸めたり切ったりしない
  • 人の入室は最小限にする
  • 発塵の少ない材料を使用する
堆積させないゴミを堆積させない工夫をする
  • 清掃しやすいレイアウトにする
  • 製品などはクリーンブース内に保管する
  • カバーを付けて保管や運搬をする
  • 配線は束ねて持ち上げる
  • 床にものは置かない
  • 必要なものでも最小限にする
  • ゴミの付着しづらい気流形状にする
除去(排除)するゴミや発生源はクリーンルーム外へ排除する
  • 定期的に清掃をする
  • 掃除方法を工夫する
  • 除塵マットの剥がし方を工夫する
  • 局所排気設備を活用する
  • 不用品はCR外へ排除する

 

4. 自然環境の塵埃濃度

クリーンルームの清浄度がいかに高度な管理下にあるかを理解するには、日常的に過ごしている自然環境との比較が有効です。以下の表は、自然環境や一般的な空間における1立方フィート(約28.3L)中の0.5μm以上の粒子数を示した参考値です。

場所・状況粒子数(個/ft³)
成層圏≦100
農村地帯(雨上がり・無風)100,000~300,000
住宅地1,000,000~
就業中の事務所2,000,000~5,000,000
工場地帯5,000,000~10,000,000
喫煙を行う会議室10,000,000~

クリーンルームは自然界や一般空間では実現できない極めて高い清浄度が求められる特別な環境です。たとえば、半導体製造で使われるクラス100の環境は、成層圏に匹敵するほどの粒子数の少なさを実現しており、日常では体験することができないレベルの空気清浄度となっています。

 

まとめ

クリーンルームは、空気中の微粒子や微生物を厳密に制御し、高い清浄度を保つ特殊な環境です。ISO14644-1や旧米国連邦規格などに基づき、用途ごとに適切な清浄度が定められ、半導体や医薬品、食品分野などで幅広く活用されています。

また、清浄度維持には「持ち込まない」「発生させない」「堆積させない」「除去する」の4原則があり、徹底した管理が不可欠です。自然環境との比較により、クリーンルームの特殊性がより明確に理解できます。

サンプラテックでは、高い清浄度環境で製造している『PEクリーンボトル丸型(UN規格)』をはじめとし、クリーン環境に対応した容器の提供を行っております。また、純度の高い水や酸で精密洗浄し、クリーンルームで使用可能な「クリーンパックシリーズ」は、半導体や試薬、製薬分野などの現場で数多く採用されております。今後も、高品質かつ信頼性の高い製品の提供を通じて、さまざまなクリーン分野のニーズにお応えしてまいります。