清浄度とは?クリーンルームのクラスや四原則を分かりやすく解説

製造現場では異物混入や品質トラブルを最小限に抑えるため、「クリーンルーム」と呼ばれる、空気中に含まれる微粒子の数に一定の制限を設けた部屋で作業を行います。クリーンルームの清浄さは用途によって異なり、現場内でも作業の内容に応じて細かく管理されているのが特徴です。
当記事では、クリーンルームの清浄度を数値で示す規格や、それぞれの用途に応じた求められる清浄度の違い、清浄度を保つ4原則などを解説します。クリーン環境の基礎を知りたい方はぜひご覧ください。
1. クリーンルームの清浄度とは
クリーンルームの清浄度とは、空気中の微粒子や浮遊微生物の量に基づいて空間の清浄さを数値で示す指標です。製品の品質を保つため、半導体や医薬品などの製造現場で厳密に管理されます。規格としては、ISO14644-1や旧米国連邦規格(Fed.Std.209E)などがあり、用途に応じた清浄度の維持が求められます。
以下では、クリーンルームの清浄度を定める代表的な規格やその違いについて解説します。
1-1. ISO14644-1
ISO14644-1は、クリーンルーム内の微粒子濃度に基づいて清浄度を9段階で分類する国際規格です。1立方メートルあたりに含まれる0.1μm以上の粒子数を基準とし、クラスの数値が小さいほど清浄度が高くなります。
たとえば、クラス7では0.5μm粒子が351,676個以下、クラス6では35,168個以下と定められています。現在、世界的にこのISO規格が清浄度管理の標準となっており、日本のJIS B9920も同様の基準に基づいています。
クラス/粒径 | 0.1μm | 0.2μm | 0.3μm | 0.5μm | 1.0μm | 5.0μm |
---|---|---|---|---|---|---|
クラス1 | 10 | 2 | ||||
クラス2 | 100 | 24 | 10 | 4 | ||
クラス3 | 1,000 | 237 | 102 | 35 | 8 | |
クラス4 | 10,000 | 2,370 | 1,020 | 352 | 83 | |
クラス5 | 100,000 | 23,700 | 10,200 | 3,520 | 832 | 29 |
クラス6 | 1,000,000 | 237,000 | 102,000 | 35,200 | 8,320 | 293 |
クラス7 | 352,000 | 83,200 | 2,930 | |||
クラス8 | 3,520,000 | 832,000 | 29,300 | |||
クラス9 | 35,200,000 | 8,320,000 | 293,000 |
1-2. アメリカ連邦規格Fed.Std.209D
アメリカ連邦規格Fed.Std.209Dは、1立方フィート(約28.3L)中に含まれる0.5μm以上の粒子数に基づき、クラス1~100,000に分類します。粒子数がそのままクラス名となる分かりやすさから、ISO制定以前は国内外で広く使用されていました。現在は国際的な統一を図るためISO14644-1が主流ですが、FED規格は今も一部現場で使われています。
クラス/粒径 | 0.1μm | 0.2μm | 0.3μm | 0.5μm | 5μm |
---|---|---|---|---|---|
クラス1 | 35 | 7.5 | 3 | 1 | |
クラス10 | 350 | 75 | 30 | 10 | |
クラス100 | 750 | 300 | 100 | ||
クラス1,000 | 1,000 | 7 | |||
クラス10,000 | 10,000 | 70 | |||
クラス100,000 | 100,000 | 700 |
2. クリーンルームの用途別に求められる清浄度の違い
クリーンルームに求められる清浄度は、使用目的によって大きく異なります。たとえば、半導体や精密機器の製造に使われる「インダストリアルクリーンルーム」と、医薬品や食品の製造に用いられる「バイオロジカルクリーンルーム」では、異物の種類や管理基準が異なります。
以下では、それぞれの用途に応じた清浄度の違いについて解説します。
2-1. インダストリアルクリーンルーム
インダストリアルクリーンルーム(ICR)は、半導体、電子機器、精密機械、自動車部品などの工業製品の製造において、空気中の微粒子を極限まで除去するために設けられた管理空間です。対象となる主な汚染物質は、塵埃や金属くずなどの微粒子であり、製品への付着による不良を防ぐため、工程ごとに厳格な清浄度が求められます。
インダストリアルクリーンルームの用途と求められる清浄度の目安は以下の通りです。
用途 | 主な対象工程 | 目安となる清浄度クラス(Fed.Std.209) |
---|---|---|
半導体製造(基板工程) | ウェーハ製造、露光、エッチング、蒸着など | クラス10~10 |
半導体製造(組立工程) | 組立、テスト | クラス1,000~100,000 |
光学機器 | レンズ加工、蒸着、組立、品質検査 | クラス100~10,000 |
電子部品 | プリント基板、コンデンサ製造、組立、検査 | クラス100~10,000 |
精密機械 | 加工、組立、検査、梱包 | クラス100~100,000 |
自動車部品 | 電装品製造、組立、検査、塗装 | クラス1,000~100,000 |
印刷関連 | 前洗浄、塗装印刷、品質管理 | クラス1,000~100,000 |
2-2. バイオロジカルクリーンルーム
バイオロジカルクリーンルーム(BCR)は、食品や医薬品の製造、再生医療など、衛生管理が厳しく求められる分野で活用されるクリーンルームです。空気中の微粒子に加え、細菌やウイルスなどの微生物の混入も防止する必要があり、無菌環境の維持が不可欠です。製品の安全性や有効性を確保するため、用途に応じた高い清浄度が求められます。
以下に、主な用途別に求められる清浄度の目安を示します。
用途 | 主な対象工程 | 目安となる清浄度クラス(Fed.Std.209) |
---|---|---|
食品(きのこ栽培) | 培地冷却、種菌接種 | クラス100~100,000 |
食品(加工・梱包) | 加工、冷却、梱包 | クラス1,000~100,000 |
医薬品 | 研究、開発、製造、無菌室作業 | クラス100~100,000 |
また、再生医療などで利用されるクリーンルームは、ISO14644-1に基づいて設計されることが多く、以下のような清浄度が求められます。
用途 | ISOクラス | 基準粒子数(0.5μm)/m³ | 使用例 |
---|---|---|---|
最終製品の無菌充填など | ISOクラス5 | ≦3,520 | 滅菌作業、最終製品の無菌充填 |
細胞培養、中間製品の処理 | ISOクラス6 | ≦35,200 | 細胞の培養、中間生成物の処理 |
培養準備、細胞組み立て | ISOクラス7 | ≦352,000 | 組織の培養準備、組み立て工程 |
更衣室、サポートエリア | ISOクラス8 | ≦3,520,000 | 出入り口、資料保存室、着脱衣室などサポート区域 |
3. クリーンルームの清浄度を保つ4原則
クリーンルームで製品の品質や安全性を維持するために重要なのが「清浄度を保つ4原則」です。清浄度を保つ4原則は「持ち込まない」「発生させない」「堆積させない」「除去する」という行動原則に基づいており、それぞれに具体的な管理策が求められます。
原則 | 内容 | 具体的な対策例 |
---|---|---|
持ち込まない | ゴミやゴミの発生源となるものを持ち込まない |
|
発生させない | ゴミを発生させる行為をしない |
|
堆積させない | ゴミを堆積させない工夫をする |
|
除去(排除)する | ゴミや発生源はクリーンルーム外へ排除する |
|
4. 自然環境の塵埃濃度
クリーンルームの清浄度がいかに高度な管理下にあるかを理解するには、日常的に過ごしている自然環境との比較が有効です。以下の表は、自然環境や一般的な空間における1立方フィート(約28.3L)中の0.5μm以上の粒子数を示した参考値です。
場所・状況 | 粒子数(個/ft³) |
---|---|
成層圏 | ≦100 |
農村地帯(雨上がり・無風) | 100,000~300,000 |
住宅地 | 1,000,000~ |
就業中の事務所 | 2,000,000~5,000,000 |
工場地帯 | 5,000,000~10,000,000 |
喫煙を行う会議室 | 10,000,000~ |
クリーンルームは自然界や一般空間では実現できない極めて高い清浄度が求められる特別な環境です。たとえば、半導体製造で使われるクラス100の環境は、成層圏に匹敵するほどの粒子数の少なさを実現しており、日常では体験することができないレベルの空気清浄度となっています。
まとめ
クリーンルームは、空気中の微粒子や微生物を厳密に制御し、高い清浄度を保つ特殊な環境です。ISO14644-1や旧米国連邦規格などに基づき、用途ごとに適切な清浄度が定められ、半導体や医薬品、食品分野などで幅広く活用されています。
また、清浄度維持には「持ち込まない」「発生させない」「堆積させない」「除去する」の4原則があり、徹底した管理が不可欠です。自然環境との比較により、クリーンルームの特殊性がより明確に理解できます。
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